マンディンゴのレビュー・感想・評価
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リウマチの治療法・・・
19世紀の黒人奴隷の扱いが酷かったというアメリカの黒歴史。最初からリウマチの毒素を吸い出すために黒人少年の体に足を乗せている農園主マックスウェル。奴隷が病気になったら、かかりつけ医は獣医だし、その少女ビッグ・パールが処女だということがわかり、息子のハモンドに相手をさせる。そうやって、白人のDNAをも受け継がせて、産まれてきた子はすぐに売りに出す・・・農園という設定だが、まるで黒人を家畜のように増殖させる奴隷農園だった。
お仕置き、お仕置き・・・と鞭打つシーンはこれまで何度も映像化されてはいるが、主人には逆らえないために性処理、子作りまでやっていたとは・・・しかし、これも現実。血統書付きマンディンゴは高く売れるため、量産したいマックスウェル。奴隷市場に赴いたハモンドは早速ミード(ケン・ノートン)という体格のよい男をゲットする。そして、政略結婚ではあるが、従妹のブランチと結婚。それがまた初夜で処女じゃないことがわかり激怒するハモンド。
現代では多くなっているが、黒人と白人のセックス描写なんてご法度の時代だった1975年。そのために長い間お蔵入りになったというエピソードもあった。さすがに兄妹のセックス描写こそなかったが、彼ら南部のモラルとしては許容範囲だったのか?
ストーリーそのものよりも、黒人奴隷に対する仕打ちが酷すぎてトラウマになりそうな作品でした。しかも最後には・・・石川五右衛門じゃないんだから、底板を置いてください。じゃなくても死ぬか・・・
八分時点で反吐出る歴史に出会える「永久保存映画」
“勇敢な映画”があるか?と聞かれたら、オレは真っ先にこいつを挙げるね。タランティーノが「ジャンゴ」のヒントにした評判も関係ナイ(ジャンゴはジャンゴは最高だからね)!黒人奴隷を描いた映画の評判なんかも関係ナイ!単にオレが「マンディンゴ」に激しく衝撃を受けたから。
間違いなくフライシャー監督は“正解の一例”見せてくれたよ。黒人奴隷の悲惨さを陰鬱BGMじゃなくて、敢えてのどかなBGMで表現させる巧みな演出。巧いし若干嫉妬したよ。ここまで醜悪な黒人奴隷の片鱗を“悲惨”で売らないで、“普通の光景”と伝える勇気、今の日本映画にないから…。ウィキにあった“ウェディングケーキのように美しくロマンチック。でも近寄ってよく見ると腐ってウジだらけなケーキ(監督談)”の意図がちゃんと伝わったし、タランティーノに感謝したよ。ジャンゴなければ知らなかったし。
それにミードやエレンにハモンド…この三人の関係もスゴい。最初のよくある主従関係が徐々に確かな絆に変わって、逆に悲劇を香らせていく…。そこを迷わず描けるところが余計に映画の価値高めたね…。最初ハモンド見たときなんか、クソ生意気なチキン野郎で最低だと思ってたのに(親父から受けた鞭打ちを最後まで直視できない上に他の奴が入った途端にガキみたいに喚く始末)、エレンと出会って価値観揺らいで、ミードを奴隷と見れない姿。たった2時間の間だけで、なんで描けたのかが不思議。
つーか、奥さん初体験が近親相姦ってのはちょっと…。黒人を“獣”扱いのうえ、病を診る医者獣医だし(それも当たり前のように)、これじゃどっちが“獣”なのか分かったもんじゃないね(だけどこれを勧善懲悪で終えないところが冷酷で良い)。正直初めての性行為場面で既に胸糞悪しだが、タランティーノの「ジャンゴ」以上とは夢にも思わなかったよ(タランティーノがインスピレーションを受ける理由も納得できるし、いかにジャンゴでどこを入れるか、入れられないかを分かっていたかも)…。
ここまで悲劇を積み重ねてラストでそれが一気に頂点。自ら招いた種とは言え、これも悲劇と言うしかない。でもぬるくて気分の悪い偽善映画を眺めるよりも、後味悪しでも見るべき価値がある映画を眺めていたい。これはそんな希少な映画。
ベストに入れる名作です!
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