劇場公開日 2021年3月12日

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「八分時点で反吐出る歴史に出会える「永久保存映画」」マンディンゴ 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0八分時点で反吐出る歴史に出会える「永久保存映画」

2016年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

“勇敢な映画”があるか?と聞かれたら、オレは真っ先にこいつを挙げるね。タランティーノが「ジャンゴ」のヒントにした評判も関係ナイ(ジャンゴはジャンゴは最高だからね)!黒人奴隷を描いた映画の評判なんかも関係ナイ!単にオレが「マンディンゴ」に激しく衝撃を受けたから。

間違いなくフライシャー監督は“正解の一例”見せてくれたよ。黒人奴隷の悲惨さを陰鬱BGMじゃなくて、敢えてのどかなBGMで表現させる巧みな演出。巧いし若干嫉妬したよ。ここまで醜悪な黒人奴隷の片鱗を“悲惨”で売らないで、“普通の光景”と伝える勇気、今の日本映画にないから…。ウィキにあった“ウェディングケーキのように美しくロマンチック。でも近寄ってよく見ると腐ってウジだらけなケーキ(監督談)”の意図がちゃんと伝わったし、タランティーノに感謝したよ。ジャンゴなければ知らなかったし。

それにミードやエレンにハモンド…この三人の関係もスゴい。最初のよくある主従関係が徐々に確かな絆に変わって、逆に悲劇を香らせていく…。そこを迷わず描けるところが余計に映画の価値高めたね…。最初ハモンド見たときなんか、クソ生意気なチキン野郎で最低だと思ってたのに(親父から受けた鞭打ちを最後まで直視できない上に他の奴が入った途端にガキみたいに喚く始末)、エレンと出会って価値観揺らいで、ミードを奴隷と見れない姿。たった2時間の間だけで、なんで描けたのかが不思議。

つーか、奥さん初体験が近親相姦ってのはちょっと…。黒人を“獣”扱いのうえ、病を診る医者獣医だし(それも当たり前のように)、これじゃどっちが“獣”なのか分かったもんじゃないね(だけどこれを勧善懲悪で終えないところが冷酷で良い)。正直初めての性行為場面で既に胸糞悪しだが、タランティーノの「ジャンゴ」以上とは夢にも思わなかったよ(タランティーノがインスピレーションを受ける理由も納得できるし、いかにジャンゴでどこを入れるか、入れられないかを分かっていたかも)…。

ここまで悲劇を積み重ねてラストでそれが一気に頂点。自ら招いた種とは言え、これも悲劇と言うしかない。でもぬるくて気分の悪い偽善映画を眺めるよりも、後味悪しでも見るべき価値がある映画を眺めていたい。これはそんな希少な映画。

ベストに入れる名作です!

平田 一
iwaozさんのコメント
2021年5月15日

正しく同感です。( ; ; )
全ての人がこれが人間の持ってる一面だということを一度は見て、
知っておくべき歴史だと思います。しかし、フライシャー監督ってもっと評価されるべき監督ですよね。

iwaoz