劇場公開日 1968年4月6日

「突きつけられた、実は自分は差別主義者という事実」招かれざる客 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5突きつけられた、実は自分は差別主義者という事実

2013年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 70
音楽: 65

 差別はいけない、差別を無くそう。そういう進歩的でかっこいいことを言い続けていることが出来るのも、実は自分には関係のないことだからということが時にはある。
 だが実際にそれが自分が直面しなければならない事実だったらどうなるのか。裕福な白人家庭の一人娘が、黒人を結婚相手として連れてきたならばどうなるのか。早くから差別に関する映画を作ってきたアメリカだが、今作では遠くから差別撤廃を訴えるのではなく、他人事ではない自分がまさに直面する問題として人種差別を真正面から見つめる。そのような問題提起として良い主題をもっている映画である。

 彼女の両親は戸惑う。差別をしないと公言し、自分でもそう思い込んでいたのに、娘が黒人と結婚するとなれば話は別。やはり黒人だから嫌なのだ。白人ならばそもそもこんなに悩む必要などない。当事者二人の愛と幸せへの思いがあっただけでなく、シドニー・ポワチエ演じるジョンが超名門大学出の実績のある医師で人格者であればこそ、話がなんとか進んだのだと思う。もし彼が普通の郵便局職員ならば反対のままだったかもしれないし、彼が白人ならばそれでも話が進んでいたかもしれない。差別をしていないと思い込んでいた人ですら、黒人を認めるのならばより良い条件が必要である。またこの問題は白人側だけでなく、黒人である彼の両親にとっても驚きであり戸惑いである。
 差別は駄目なんて多くの人がそう思っているし理屈ではわかっている。だがそれは自分とは直接関係の無い別の次元で思っている。差別は駄目、でも自分の隣に外国人が引っ越してきて住むのは嫌、外国人が自分の家族になるのは嫌、特に発展途上国から来た人や黒人は嫌、今でもそんなことを思う人は日本でもアメリカでも多いと感じている。考えさせられるし、アメリカがこのような映画をきっちりと大物俳優を使って、こんな昔から自らの恥部を暴く作品を作り上げる懐の深さは立派。

 だが主題はいいが物語は少し安直である。娘は短期間で恋に落ちて結婚を決意し、いい年した分別ある彼氏も同様。そして結婚の報告の後の家族の問題も意外とあっさりと短期間で片付いていく。せっかくの良い主題なので、もう少し作品の中で時間を使った展開のほうが説得力があったのではないかと思う。

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Cape God