マディソン郡の橋のレビュー・感想・評価
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まっとうだけがいいとは限らない…
たった4日間の恋も、母は許されないのか。
家族が留守の間に起きた、母だけの秘密を、なぜ墓場まで持って行かなかったのか。
あんな形でも子供たちには正直に伝えたかったのか。
映画を観てからしばらく考えるが、夫には尽くした、もちろん子供たちにも愛情を注いだ。
だけど、私の人生こんな一面もあったんだよ。。。と伝えたかったのか。
それを伝えることで、子供たちに何かプラスになると考えたんだろうと思いたい。
息子と娘は、自分たちの人生を見つめ直すきっかけになったと思うと、これもありかなぁ~と思える。
「夫はまっとうな人」、という言葉が、清いだけでなく夫婦としての愛を求めていたのかな。
わかる気がする。
巨匠も26年前は、結構ねっとりでしたね!(笑)
「マディソン郡の橋」って名前は知ってるけど
中年の恋愛なんて興味無いわ~~ってことで
スルーされがちですが、「午前10時の映画祭」で鑑賞。
評価されてる映画にはちゃんと見所がありますね。
主人公の主婦が高齢になって亡くなりその遺言を、
中年にさしかっかった子供たちが見るところから始まり、
数10年前の秘められた母の心に触れて行くというつくりが
謎解きのようで引き込まれます。
ほとんど舞台劇の様な、メリル・ストリープと
クリント・イーストウッドの会話が肝になっていて
平凡な田舎の主婦の心の揺らぎが繊細に描かれて
受賞はしなかったけど、メリル・ストリープは
この映画で1996年のアカデミー賞にノミネートされてます。
人生の晩年になって、遠くになってしまった人から
並々ならぬある思いが届く~
そのシーンに泣けてしまった。
で、月に8回ほど映画館に通う中途半端な映画好きとしては
「ダーティー・ハリー」とか「グラントリノ」での
しかめっ面しか記憶になかったけど以前に観た
「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」での笑顔!
若きクリント・イーストウッドは超イケメンでしたね。
ブルーの瞳がまぶしいくらいでした。
また、「ナショナル・ジオ・グラフィックス」の
カメラマンと言う設定!
これって社会的な信用度が高い!と
以前に町山智浩氏が話してました。
それなりにインテリジェンスも感じさせるし
思い機材を持って世界中を飛び回ってるから
しっかりした体躯~~
イケメンの面影が今作の中にも随所にでていて~~
メリル・ストリープで無くともちょっと靡いちゃう~~
田舎の閉そく感、家族への思い、愛する気持ちの葛藤を
とても繊細に描いた映画なので
生々しいセックスシーンはほとんど無い代わりに
心の揺れを表現するキスシーンが何回もあってその上、長い!
イーストウッド御大、今ならもうちょっとカットしたかしら?
恋に年齢は関係ないが、この悲恋への決着の付け方は歳を重ねているからこそできたのだろう
午前十時の映画祭11にて。
男女の恋愛を描く映画では、二人が恋に落ちる様子を限られた尺でどのように見せるかが重要だったりする。
この映画はそこを見事に描いてみせた時点で、映画そのものの成功を決したと言えるのではないだろうか。
出会いから別れまでがたった4日間だというのは映画では珍しい設定ではないが、出会って何となく惹かれ会う1日目、互いに再開を強く望む2日目、そして結ばれるその夜までの丁寧な描写に、脚本と演出のレベルの高さが現れている。
中西部の片田舎のオバサンになりきったメリル・ストリープが、浴槽に浸かって、さっきまでここでイーストウッドがシャワーを浴びていたのだと思いを巡らすシーンが素晴らしい。恋へのときめきを「エロティック」だと表現するモノローグとともに、恍惚感すら表すストリープの表情。浴槽から見上げるシャワーヘッドから滴り落ちる雫をも色っぽく感じさせる。
スピルバーグのアンブリンとイーストウッドのマルパソの共同製作だが、もしスピルバーグが監督だったら、あんな情緒豊かな描き方はできなかっただろう。
そして、別れのシーンもまた丁寧だ。
短い時間に様々な葛藤が渦巻く熟年女の揺れ動く心を表現した脚本と、メリル・ストリープの演技の素晴らしさ。
イーストウッドが去っていったその道を、夫と子供たちが逆にたどって戻ってきたとき、ストリープが家族に笑顔を向けつつもその道を見やる。誰の姿もないその道をストリープの目線で一瞬映して、切なさを演出する。
クライマックスは雨中のすれ違いのシーンだ。車に乗り込んだ後はイーストウッドの表情を映さない。ルームミラーにペンダントをかけて見せることで、ストリープの心に永遠の愛を誓いながらも別れを受け止めたことを語りかける。
夫が運転する車の助手席で、ストリープは再び葛藤する。そして、耐えきれず涙を流すが、夫はその変化に気付くのだ。
このシーンは、数ある恋愛映画の中でも屈指の名シーンだと思う。
女は、田舎での生活を続けることを選び、一瞬で燃え上がった不倫の愛を心に留めつつも、罪のない夫を愛し続けることを誓ったのだ。
年老いて病床に伏せる夫がストリープに夢を叶えてやれなかったと詫びる会話もまた、この脚本の素晴らしいところだ。夫に寄り添い愛していると告げるストリープに決して嘘はない。
たった4日間の不倫は、環境はそのままであっても家族や町の人たちとの関わり方を変化させただろう。二度と逢うことがないイーストウッドを思い続けながらも、夫をそれまで以上に愛することができた。それが熟年の恋だったのではないだろうか。
それを、今や中年となって夫婦の微妙な問題も体験した息子と娘は確りと受け止めた。
原作の小説は世界的なベストセラーだが、あざとく泣かせる物語で、撮る人次第ではそのままの泣かせる映画で終わっただろう。
そうならなかったのは、監督クリント・イーストウッドの演出力と彼が選んだリチャード・ラグラヴェネーズの脚本、メリル・ストリープの奥深い演技の賜物だ。
自分も歳取った
生涯にたった一度の確かな愛
ベストセラー小説を映画化した恋愛巨編で中年男女の4日間の恋を描いた作品。ただの不倫映画ではない名作ならではの雰囲気を随所に感じました。
往年の名優クリント・イーストウッドとメリル・ストリープ、大御所2人の共演も素晴らしくスクリーンに引き込まれます。ラストに近づくにつれて盛り上がる展開も抜群。
(午前十時の映画祭にて鑑賞)
2021-61
屋根付き橋を渡る姿は見えない
大人の恋愛映画
切ない大人の恋愛映画。
だけど、言っちゃえば不倫の話。
子供たちに向けた手紙の中で「彼を恨まないで、むしろ感謝するはず」みたいな部分があったけど、どこが感謝するところがあった?
母親の不倫の話なんていくら美しい愛であったとしても子供からしたら全然感謝なんてできるはずない。そのおかげで家庭が円満だったとしても。
とにかく不倫を美化した作品。
イーストウッドはめっちゃおじいさんじゃないかと思ったけど、さすがかっこよかった。
やっぱりいい
午前十時の映画祭で観賞。
アイダホの農場の主婦フランチェスカ(メリル・ストリープ)は単調な日々を送っていたが、夫リチャードと二人の子供たちが子牛の品評会のため出かけ、4日間一人きりで過ごすこととなる。
そこへ屋根のあるローズマン橋の写真を撮りにやってきたカメラマンのロバート(クリント・イーストウッド)がやって来て、道を尋ねられた。世界各国を旅しての面白い話などから彼の魅力に惹かれたフランチェスカは、彼を夕食に招待する。ドアの締め方など細かな配慮も出来、二人はデートの末、恋に落ち、そのままベッドを共にする。
最後の夜、ロバートから、一緒に来てくれ、と言われ、フランチェスカは荷物をまとめるが、家族を思い、結局ついて行かなかった。
夫リチャードの死後、フランチェスカはロバートに連絡を取ろうとするが、会社も辞めて消息不明で連絡は取れなかった。何年か後に、弁護士を通してロバートの遺品が届く。そこには、手紙やフランチェスカが彼に手渡したネックレスとともに『永遠の4日間』という写真集が入っていた。
フランチェスカの死後、彼女の遺品のノートには「人生の全てを家族に捧げた。せめて残りの身は彼に捧げたい」という遺志が記されていた。息子と娘の兄妹はようやく母の遺志を理解し、遺灰は、ロバートの遺灰と同様、ローズマン橋の上から撒かれた。
アメリカ・アイオワ州マディソン郡でたった4日間に生涯の恋を見つけた中年男女の愛の物語。
クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの名演技での切ない恋が素晴らしい。
久々に大画面で観賞したが、やっぱりいい。
田舎で自分が居なくなった場合の残された夫や子供達の事を考えて思いとどまるフランチェスカの表情が切なくてなんとも言えないくらい良かった。
アイダホへ行ってみたいと思っているが、まだ行けてないので、いつかロケ地巡りをしてみたい。
一生忘れられない恋をしたように見えなかったのが残念
お互いの事を忘れなかったという遺品を主婦の子供たちが見つける場面から始まるのと、最後にカメラマンの遺灰が出会った橋に撒かれた事を知って主婦も自分のもそこに撒いてほしい、残りの時間は彼と共にしたいという遺書の展開はロマンティックで良かったけど、何故そこまで、特に世界を飛び回るカメラマンが平凡な主婦に4日だけで一生忘れないほど愛情を持ったかがはてな?な感じ…一緒にいた最後の日に男が女に生涯で1度だけこれは特別だと確信が持てると言うほど観客にそれが伝わらない。まあ普通に短時間に燃えた恋にしか見えない。街での別れの場面が強烈で一生尾を引いたのか?その一緒にいた4日間が濃く書かれ過ぎて夫が死んでからカメラマンに連絡を試みるけど、もう所属先の会社にはいなかったところあっさりしすぎ。そんなに忘れてないならもっと探しなよって思うけどな。 クリントイーストウッドはかっこいいけど。
90年代の傑作。映画好きならマストの作品。
不倫映画だよね?
5年後にまた観てみたい
この映画で一番心に残ったのはフランチェスカは教師時代の話をロバートにします。
「どの子も才能を秘めていたのよ、なのに私が才能を引き出すことができた子を私は素晴らしい子だと思ってしまったのね」というようなセリフです。
お酒の力もあって会話は弾み、イーストウッド演じるロバートは犬歯の後ろの歯までみえる笑顔になります。それをみつめて笑いかえすフランチェスカに私は生徒の話と同じことを感じました。
離婚で痛手を負った男性の家事を手伝おうとする姿や、写真集を出すべきというフランチェスカの言葉を約束のように実行するロバートがいじらしい。カメラのフィルムは冷蔵庫にしまうのに時計をしたまま行水をしたり、置手紙があってもシャッターチャンスを逃さないため写真を撮ってから読むというような、目的以外のことには無頓着になってしまう一面もあって完璧な男にはなっていないのもよかったです。町のレストランで、不倫をしてために住民からつらく当たられるルーシーに声をかけ、寄り添う気持ちもある。
フランチェスカが夫と買い物をするのを雨にずぶ濡れになって見つめるシーンは胸が締め付けられ、バックミラーにペンダントを懸けるところもなにか儀式のようで、苦しくて叫び出したくなるのに微かな怒りも感じました。自分と夫をずぶ濡れで見つめる俺を見せつけてくるところがアーティストでした。
寝取られ夫であるリチャードは、妻がいないと眠れないかもと言ってしまうような人です。
四日間家を空け、帰ってきたら妻が美しくみえたとしたら何を感じただろう。車のなかで妻がいきなり泣き出して、「お腹が痛いの」とか「悲しいことを思い出したの」と言い訳もしてくれない状況に何を思っただろ。バックミラーに掛けたペンダントはフランチェスカしか気づかなかったのだろうか。
人生の最終章で妻に「夢と違う人生を歩ませたね」と言う夫は本当に何もわかっていなかったのだろうか。
フランチェスカはロバートと一緒に生きることを選ばず、家族と暮らします。
昔の私はそれば夫に対して失礼じゃないか!と思ったものです。ですが今はそう思えなくなりました。自分が駆け落ちしたことで、夫も子供も愛されてなかったと思ってしまうことに耐えられなかったのでは?いままで気持ちを重ねてきた夫がこの町では女房に逃げられた男のレッテルを張られたくないのだと感じました。
また田舎町では魅力的に感じるロバートとの生活、非日常が日常になったあとの不安があっで、慣れ親しんだ生活を捨てれなかったように取感じます。死んだあとは夫の隣で静かに眠るのではなく、灰になって風雪に翻弄されどこかへ飛んでいくことを望んだフランチェスカにとってリチャードは夫というより庇護者になっていて甘えていたようにも感じました。
母の四日間の記録を読んで、彼女の子どもたちはメッセージを受け取りました。
ひとりは自分の妻に「今の人生で不満はないか」と聞き、愛を伝えます。
もうひとりは自分をないがしろにする夫に別居したいとを伝えます。
2人とも大変なことはあるだろうけど、明るい顔をしていました。
母も娘も似合っていなかったドレスにはどんな意味があるのだろう。
今の私にはわかりません。意味などないのかもしれません。
それはもっと年を重ねたらわかるのかな。
ロマンティックなシーンで「なんでこの季節に暖炉を焚いてるの」と気になり出したり、ロバートの焦げたトーストが焦げのないトーストに変わることに気を取られてしまう私は恋愛は向かないのだと感じました。
「アイスティーでもいかが?」
夫とも上手くいっているのに本気の恋をしてしまったのは、ロバートが言っていたように「生涯で1度の確かな愛」を見つけてしまったということですよね(^-^) 独身の時に出会っていればよかったという問題ではなく、今出会えたからこそ「永遠の4日間」を過ごせたのかな・・・僕もアイスティーが飲みたくなる(笑)
マンジャーレ、カンターレ、アモーレ
「食べて、歌って、愛し合う」ただそれだけで幸せ。イタリアにそういう言葉がある。
地の果てでも、美味しい食事と素敵な音楽、そして愛する人がいれば人生は幸せなのだろう。
旦那との日常にマンネリ化していた主婦のもとに現れたリベラルな写真家の男。家族不在の4日間にいけないと分かりながらも、ジリジリと惹かれあうふたり。最近でいうと「昼顔」のような世界である。
「不倫は文化」だとトレンディー俳優が言ったが、いつの時代も人間の根っこの部分に蔓延る、誰かを愛し愛されたいという欲求。ないものねだりで新しいもの好きの性。昨今それへの非難が目に余るものがある不倫を、切なくも美しく描いている映画。
肯定も否定も価値観は人それぞれだが、倫理と人類愛の狭間で揺れる、不倫についてのひとつの最適解がこのなかにある気がする。現代ではヒッピーの延長上に、ポリアモリーの文化も拡がる。
そしてこの作品を観て、改めて映画は時代を刻み込むものだと感じた。歴史は感じても決して色あせない。その時代その時間に生きた人たちがいるから、いつ観ても生々しい。
恋する気持ちも一緒ではないだろうか。人はいくつになっても恋したい生きものだ。
それと、やっぱり手紙の文化はいいよね。いまやどこにいてもいつでも連絡が取り合えてしまう世界。どうやってもう一度あの人に会えるのだろうか、ズキズキしながら繋がりをたぐり寄せ、その瞬間を待ちわびる感情に萌えた。
生涯に一度の恋
不倫についての重い重い映画
クリント・イーストウッド監督。
ベストセラー小説の映画化。
中高年の恋愛をテーマにした一大叙事詩。いや、橋の上から始まる老カメラマンと中年主婦の成就できなかった大恋愛。
タイトルは気になっていたのだが、見る機会がなかった。
若い時分には本腰を入れて観る気はしないだろう。主人公たちは、あまりに歳をとりすぎている。しかし、このようなことは、いくらでもありうることなのだ。
人間の色恋についてためになる作品であることは間違いない。本来なら映画館で集中して観るのがおすすめだ。作中の物語は四日間に及び、さらに最終的には数十年に渡って続く。切ない。
60を超えたスチール写真のベテランカメラマン(独身)とイタリア出身の主婦(農婦)の恋愛物語。この設定が洒落ている。イタリアからアメリカに嫁にきた女。
ワシントンのフォトジャーナリスト。
結婚してアメリカ人になったイタリア出身の女には中高生の娘と息子がいて、アメリカの片田舎で農場をやっている。夫は生真面目な農夫。外に出る機会はほぼゼロのような生活。
決して不幸ではない家庭を捨てて恋愛をとるか、恋愛を捨てて家庭を守るかの究極の選択を迫られたフランチェスカの物語。
一応、ハッピーエンドにはなっているので、観て損した感じはしない。
死んだ母の遺品整理をしている時の娘と息子のある一日を描いている。物語は母が書いた手紙を通して語られる。母は亡くなったばかりだ。
このドラマが感動的なのは、フランチェスカとロバートは、燃える愛の炎を互いに胸に秘めながら、別れて、死ぬまで相手を思い続けたところにある。
感情の自由と美しさを教えてくれる
現実的で全く美化されていない、リアルな純愛。
「こんな確信は生涯で一度きりだ。」
これに尽きる。人生は選択の積み重ねだが、確信というのは、積み重ねたもの、守るべきもの、正しいと感じるもの、選ぶべきものから得られるとは限らない。
その確信に出会えた事がまず奇跡で、たとえ家族を置いて着いて行く選択をしなかったとしても、人生でその確信の気持ちをお互いに大切にできたことが、素晴らしいと思う。心に嘘はつけないしつく必要ないと思うから。
深入りしてしまい迂闊だ無防備だという声もあるかもしれないが、遠いイタリアの故郷を離れて元アメリカ軍の夫と田舎に移り住み、何もかも近所にあけすけで助け合いながらも平凡を抜け出すわけにいかない毎日で、家を守り家族を育てる日常だったところに、外の空気を知り故郷も知る人が現れて困っていたら、助けてあげたいしもう少し話をしたい、そう思うのは人間として自然の流れだろう。
感情に素直なフランチェスカが、私は好き。
迷い込んだロバートが男性であるがゆえに、家族と違う男性と知り合って興味を持った後ろめたさがあるからこその、摘んでもらった花束に毒草よと言ったり、世間体よりも、もう少し話したいと感じた自らの気持ちを優先させて約束を実行したり。最終的に家族との日常生活を選んだ事も、フランチェスカは心に嘘はついていないと思う。
家族が嫌で苦しかったわけでも、ロバートに我を忘れて入れ込んだわけでもなく、とても自然で、だからこそ最後まで共感できるし、人の複雑で揺れ動く定められない感情の描き方がイーストウッド監督は本当にいつも上手で天才だと思う。
イーストウッドの演技も素晴らしくて、ロバートは何にも固執せず自由なようでも、最初は、フランチェスカに対して、退屈して窮屈なんでしょう?とさも聞いて言わせたそうなロバートで、フランチェスカとの関係性にフランチェスカ側の理由を持たせたい感じもしたが、最後にはフランチェスカについてくるかどうかの選択を強制せず、相手の事情を考慮して、出た答えを受け入れる覚悟でいるところも、単純に人妻に手を出す浅はかなアウトロー人とは感じさせず、深みのある良い人だと思わせる。
薄くなった毛を雨晒しにしてでもトラックの外で待っていた時、夫と乗り込むフランチェスカを見て、どんな気持ちになっただろう?
惨めな気持ちもしただろう。
それでもそれよりも大きく、一緒にフランチェスカを連れていかれるかとは関係なく、ただただフランチェスカとの確信を感じているのも演技から伝わってくる。
メリル・ストリープも、主婦としての、家族がいる幸せを感じながらも滲み出る平凡な生活感と、女性としての、中年でも無理せず自然に出る色気、行きずりではなくロバートを女性としても人間としても真剣に好きになったからこその怒りをロバートにぶつけるところなど、仕草をはっきりと演じ分けつつ、今までの人生から得た「立場」があるから迷ってるけれど迷いでさえも「どれも本当の気持ち」というのが伝わってくる。演技が本当に本当に上手で大好きな女優さん。
人の気持ちは移ろうもので出会った時の温度も永遠ではないし、誰かを好きだ嫌いだと割り切れるものでもないし、感謝すべき当たり前な日常に気持ちが入らない時があるのもごく自然な事で、誰かに好感を抱く時って、性別や年齢や配偶者がいるかや、そういった立場を凌駕して起こるものだと思う。そしてその好感が人間としてか友人としてか男女としてかも、境目はかなり曖昧だと思う。
でも、その自然な気持ちを、周りを傷つけないため、死ぬまで心の中にしまっておいたフランチェスカは充分に配慮があると思うし、死後、自らが経験した、立場によらず人を愛した感情を子供たちに伝え、幸せになることに全てを尽くしなさい、と言葉を遺すのはとても美しい。
驚きと少しの軽蔑とショックから入った子供達も、母親が実際に経験した境遇だからこそ受け止めることができ、自らの配偶者の置かれた境遇も思いやれるようになったり、家族との向き合い方を考え直したり、心に素直になれる様子も見ていて良かったし私も同じ気持ちになった。
それがたとえ世間から見て良いとは言い切れないものだったとしても、1人の人が生きた生涯の経験や気持ちはとても美しく引き込まれる「真実」で、同じ人間だからこそ誰かの人生を知ると響くものがある。
それは、誰かのため、や、正しいから、選んだものではなく、その人の気持ちが詰まっているからこそ。
人生って実は究極に自由で、行動には立場や制限があったとしても、心が想う愛する寄り添うのは無限で自由。
そして、たとえ一緒に過ごせなかったとしても、惜しまず想えばよいしそれは必ず伝わるし、もしも一緒に過ごせる立場や環境や関係性なら、惜しまず思い切り態度に出して想えば良い。それを教えてくれた作品。
永遠に美しく
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