劇場公開日 1995年9月15日

「恋愛遍歴に依存する永遠の4日間」マディソン郡の橋 凛々シストさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5恋愛遍歴に依存する永遠の4日間

2010年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

下手したら(下手しなくても)、不倫を美化しただけの映画と批難されるかもしれませんけれども、私は、クリント・イーストウッド監督の映画が好きで、主演女優がメリル・ストリープってことで、もしかしたら色眼鏡かけて鑑賞してしまってるからかもしれませんが、少なくともメリル・ストリープ演じるフランチェスカは、アイオワ州にあるマディソン郡という片田舎で家族がある身なわけですが、イーストウッド扮する自由気ままな放浪カメラマンのロバートと不倫関係に陥ってしまったことに対して、自分の夫や子供の家族に対して一生罪悪感を背負って生きたわけで、決して不倫を美化しているようには観れませんでした。

この映画は、観る人の過去の恋愛遍歴にかなり依存するんじゃなかろうかと思います。
つまり、共感できるところがなければ、全く持って感動もクソもない映画だと思いますが、少しでも、例えば自分の現在や過去の恋愛遍歴において、リンクするところがあれば、涙なくしては観れないんじゃないかなと。

TSUTAYAの『世界が泣いた映画100選』にも選ばれておりますが、少なくとも私は、この映画と共通する点があって、夜な夜な物凄く泣けてしまいました。
まぁ、私の恋愛遍歴なんぞどぉでもイイんですけれども。

自由気ままな、孤独を背負う放浪カメラマンのロバートは、人妻のフランチェスカを落としてしまうわけでございます。

落すという言い方は正しくありませんね。
結局、お互いが惹かれていった結果ですから。

この映画の設定では、夫も子供もいる女性と、孤独な男性の話ですが、規模を小さくしたら、彼氏・彼女の居る異性と恋愛相談をしているウチに、気がついたら相談したりされたりしてた相手を好きになっていたみたいなことです。(多分。というか少なくとも私はそういった経験があります。どうでもイイけど)

映画の主演2人は、それこそイイ年こいた大人ですけれども、内面は子供なんだと思います。
少なくとも、この2人が出会ってからは、お互い童心に戻れたみたいなところがあるんじゃないかなと思います。
そういうノスタルジーを感じました。

映画『ニュー・シネマ・パラダイス 』でも同じ手法がとられていますが、これは、フランチェスカの子供が、母の残した手紙を読んで、母の過去を振り返るという手法が取られています。
これは近年では、ニック・カサヴェテス監督の『きみに読む物語』でも取られた手法です。
『スタンド・バイ・ミー 』でも、新聞を見て過去を振り返るという手法がとられていて、ノスタルジックな雰囲気を演出するためには、多分ベストな手法なんでしょう。

そして、その母の遺した手紙を読んでいくうちに、子供達は、最初はロバートのことを嫌悪していましたが、次第にそういった感情はなくなり、フランチェスカは、あなた達2人を心から愛していると、いった言葉で、締めくくっています。

子供の頃は、子供の時代が永遠にあると感じたりなんかした時がありましたが、大人になると、色んな責任とかがあったりとかして、願望はあっても中々そういう気持ちになることはできません。
しかし、この2人は、たったの4日間が永遠に感じたと。
永遠の4日間だと言っております。

たかが4日間が、永遠に感じられるほどに、それが間違いであったりして、フランチェスカが家庭を守ってロバートを捨てる結果になっても、その4日間は幸せだったと。
生涯でたった1度の確かな愛であったと、ロバートは言っております。

大人になって、童心に帰れるような希有な人物と出会い、たかが4日間を永遠に心にしまっておけるなんて、なんちゅー素敵な話なんやと思いました。
不倫を美化しただけの映画ととる人も居ると思いますが、これはいたって純粋なラブロマンスだと私は思います。
博愛であれとは言いませんが、愛も一つだけではないのです。
夫婦愛もあれば家族愛もあるし、親子愛もあれば恋愛もあるのです。

またこの映画、情景が非常に美しいです。(特に夕日がお気に入り)
火葬にして、その灰を撒いて、空撮で俯瞰する最後とか、死んで尚、家族を見守るとか、思い出の場所を見ているとかいう意味を感じて、鳥肌ものでした。
流石イーストウッド!

凛々シスト