劇場公開日 1994年2月19日

「【”勝利に拘り過ぎるより、大切な事が人生には沢山ある。” 我が子に過大な期待を掛け過ぎる事を戒める作品でもある。】」ボビー・フィッシャーを探して NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【”勝利に拘り過ぎるより、大切な事が人生には沢山ある。” 我が子に過大な期待を掛け過ぎる事を戒める作品でもある。】

2021年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

泣ける

知的

幸せ

ー 今作の主人公は、幼きチェスの天才、ジョシュ・ウェイツキン(実在の人物だそうである。)であるが、チェスのルールを知らなくても、十二分に面白く、且つ後半は特に子供を持つ方にとっては琴線に触れる作品であると思います。ー

◆ボビー・フィッシャーとは、アメリカ人で初のチェス世界チャンピオンになった方だそうである。
 が、その数々の奇行、失踪でも有名な方だそうである。
 全て伝文記載なのは、今作の原作本ジョシュ・ウェイツキンの父親フレッド・ウェイツキンの今作と同名の本を読んだからである・・。

<Caution 以下、ネタバレあります>

■今作の素晴らしき点

 1.ジョシュが公園でヴィニー(うわわ・・、という位細い、ローレンス・フィッシュバーン)と対戦する姿を見て、彼のチェスの才能に気付いたフレッドは、ジョシュの才能を更に伸ばすために、”メトロポリタンチェスクラブ”に赴き、ブルース(うわわ・・、という位髪の毛ふさふさのベン・キングスレー)に正式にコーチを頼む。
 ー ヴィニーのストリートチェス戦法と、ブルースの王道チェス戦法の違い(特にクイーンの使い方)が面白い。
 又、ブルースの超一流になるには、チェス以外には興味を持たせない程の厳しいコーチングにも、納得する自分がいる。
 確かに、将棋を描いた作品では、奨励会の壁を乗り越えられず、挫折する若者の姿を描いたものが多いし、悲愴感漂う作品が多い。
 実際にある分野で、超一流を目指すのであれば、他には目も向けない位努力しなければいけないのであろうが、この作品では、そのバランスを上手く描いていると思う。ー

 2.ジョシュを身をもって守る母の姿
 ー ジョシュに厳しき言葉、態度で接するブルースに対し、”出て行って!”と厳しく言い放つ母親の姿。
   両親から過大な期待を掛けられたら、子供は「車輪の下」状態になってしまうだろうが、この母親の”息子を親のエゴともいえる、過大な期待”から守ろうとする姿が素晴らしい。ー

 3.フレッドの改心する姿
 ー 父、フレッドも又、ジョシュを重要なチェス大会の前に、チェス一切なしのフィッシングに連れて行くシーン。彼も又、自らの誤りに気付いたのであろう・・。ー

 4.ブルースの改心する姿
 ー 彼の厳しきブルース <且つては、”チェストは、一生を賭ける学問だ!”と説いていた。そして、白紙の”チェス マスターコース認定証”を餌に、ジョシュにヤル気を出せようとしていた・・。>
 が、ジョシュに、重要な大会前に額に入れたキチンと名入れした【マスターコース認定証】を渡し、”君をとても、誇りに思う。コーチとして光栄だ。”と語り掛け、励ますシーン。かなり、沁みる。

 5.ジョシュが、交わりを禁じられていたヴィニーと公園で真剣に、けれども楽しそうにチェスをする姿。

 6.重要な大会の決勝戦で、ジョシュがライバルに掛けた”僕の勝ちだ。(けれども)引き分けにしよう・・。と握手を求めて手を差し出すシーン。
 ー とても、7歳とは思えない器の大きさである。ー

<今作品を観て、
 ”甘い!勝負はそんなに甘っちょろい考えでは勝てない!”
 と言う人は多いであろう。

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 実は、且つての自分がそうであった。
 多少、世間に知られた大学に入り、意気揚々としていた時、当時の聡明なガールフレンドが誘ってくれた映画が、本作であった。
 だが、おバカな私は感動はしたが、今作から学ぶことなく結婚し、息子が出来、幼子になった頃から、彼にかなり厳しく接した。
 息子は心優しく、人と競う事が嫌いな性分だったので、”心配して”サッカーを習わせ、ヌルイ動きをした際には、車の中で叱責した。
 だが、息子はそれに耐え、サッカーを続けたがチックが出るようになった。
 家人が私にそれを指摘し、私は反省し、息子への接し方を変えた。
 サッカーの送り迎えはしたが、口を出すことは一切やめた。
 息子は頑張って、高校時代には、レギュラーとして活躍するまでになった。
 大学生になった息子と当時の事を話すと
 ”父さんの存在は、反面教師として良い経験になったよ・・”と笑いながら言ってくれた・・。
 愚かしき父親には、出来過ぎた息子であると勝手に思っている。>

NOBU