「潜水艦は準主役でした」北極の基地 潜航大作戦 多田納人さんの映画レビュー(感想・評価)
潜水艦は準主役でした
1968年公開の「北極の基地/潜航大作戦」(原題 Ice Station Zebra)を見ました。
「ナバロンの要塞」や「荒鷲の要塞」のアリステア・マクリーンの原作を、「荒野の七人」や「大脱走」などこれまたアクション映画を得意とするジョン・スタージェスが監督した作品。
北極のイギリス気象観測基地「ゼブラ」からのSOS信号を受けて、アメリカの原子力潜水艦タイガーフィッシュ号が救出に向かった。乗員はファラデイ艦長(ロック・ハドソン)以下乗組員と英国のエージェント ジョーンズ(パトリック・マクグーハン)、任務のため乗り込んだ海兵隊員たちだったが、途中ジョーンズの協力者でロシア人のバスロフ(アーネスト・ボーグナイン)と海兵隊の指揮官としてアンダース大尉(ジム・ブラウン)がヘリコプターで乗船してきた。
やがてタイガーフィッシュ号は北極の氷原の下に到着、厚い氷を爆破しようと魚雷を準備した時、何者かの工作によって発射管から海水が浸水し、圧壊寸前まで下降するという事件が発生する。
ファラデイ艦長自身は本当の作戦目的を知らされていないこともあって、乗り込んで来た怪しげな3人の正体を掴めないでいた。
やがて潜水艦は氷を突き破って浮上、彼らは嵐の中ゼブラ基地に到着したが、施設は火災で大半を失い、所員たちはほとんどが死んでおり、残った者たちも意識もうろうとした状態だった。
ここにきて、ようやく本当の事態が判明する。
ソ連の人工衛星がアメリカとソ連のミサイル基地を撮影したが、そのフィルムが入ったカプセルが、ゼブラ基地近くに落ちたために起こった争奪戦の結果の惨状だった。
やがて、ブリザードが治まり天候が回復すると、ソ連軍の降下部隊が押し寄せ、彼らと対峙することになるのだった。
まず驚いたのは、映画開始に予想外の「序曲」(音楽はミッシェル・ルグラン)から始まったことです。
そしてクレジットで「シネラマ」の文字が。
おお、なんと現在は死語の「シネラマ」だったのです。ということは大阪ではOS劇場で公開されたのではないでしょうか。途中に「インターミッション」、最後に「退場曲」まであり、今やほとんど見ることがない堂々たる大作の風格の作品でした。
さて、この映画所謂「潜水艦映画」だと思って見始めたのですが、そうではありませんでした。
確かにアメリカ海軍のスケート級原子力潜水艦が登場し、映画前半はほぼ原潜の艦内で話が進みます。敵の破壊工作であわやという深度まで沈んだり、北極の氷の下を氷山をソナーを頼りに回避しながら航行したりと、手に汗握るシーンもありますが、全体的に「準主役」といった扱いでした。
話はアリステア・マクリーンの原作らしく、最後の最後までどっちへどう転ぶか分からない緊張感があって、最後まで目が離せません。またラストでアメリカとソ連の兵士が雪原でカプセルを挟んで対峙する場面は、一触即発なかなかの緊迫感もあり、面白く拝見しました。
当時は冷戦下だったにもかかわらず、ソ連の現場指揮官をなかなかしたたな設定にするなど、一方的にソ連を悪者にしておらず、痛み分けの結果としている点も当時は物議を醸したのでしょうか。
