「有言実行って大事。なのに神さまは雄弁不実行で不条理。そんなことを描いたスペクタブルパニック劇の傑作」ポセイドン・アドベンチャー(1972) 野球十兵衛、さんの映画レビュー(感想・評価)
有言実行って大事。なのに神さまは雄弁不実行で不条理。そんなことを描いたスペクタブルパニック劇の傑作
変化球と言うか、大暴投好みの岩鬼みたいな私ですが。この度は、どストレートに王道の超名作をチョイスです。
なんでか、そんな気分になったので。
ひねくれ者の私、元々なんですが。『沈黙~サイレンス~』を観た時にも強く思いました。神さまなんてものが本当にいるのなら、極めて残酷でな不条理な存在だと。もっと言えば、迷惑でさえあると。
本作を創ったロナルド・ニーム監督、その神の扱いに対して、あれやこれやの団体から、厳しく非難されなかったのかな?と心配に思いました。なにしろ神の全否定(?)ですからね。宗教絡みってマジややこしくて面倒くさいから嫌い。
でも神さまなんて、問うても祈っても、何も応えてくれないのですから、こういう描き方も仕方ないと思うんですよ。
だから、神さまに怒ってもいいと思うの。私は信仰心なんてありませんから。
そんなものアテにするよりも、モエラじゃないけど「自分の運命は自分で切り開く」有言実行スタンスのスコット牧師の方が、極めて正しく思えました。
序盤で、牧師がローゼン婦人に「人間、一番大事なのは命でしょう」と説きます。本作のスコット牧師。その命を救うため、我が身を顧みず、実行の人だったんですよね。神さまよりも尊い行いです。
これ、信仰より大切なことズバリだと思いました。『沈黙~サイレンス~』とは対極。
ただの遭難事故じゃなくて、舞台となる船を180度転覆させたアイデアが秀逸だと思いました。
困難な脱出の過程が、ゲーム的要素もあるように思えました。私、ゲームはしないので、あまり突っ込んだことは言えないのですが。
できないことなど、ないように思われている特殊撮影技術全盛の昨今です。しかし、大掛かりなセットを使って、こういう生の臨場感を生むのは、もう無理な時代なのかな…と、残念に思わされました。
壮大なセットで壮大な物語を創る。これぞ映画の醍醐味だと個人的には思うのですが。
そして、こういう作品がゴールデンタイムにTV放映されていた時代は、お茶の間が一家団欒のミニシアターだったです。懐かしぇ。
本作、多くの登場人物が無駄なく魅力的に描かれていました。
下手すれば散漫になりがちなところを、それぞれのシーンや台詞で、丁寧にキャラクターを掘り下げていたところが素晴らしかったです。誰もがみな人間的なので、感情移入がしやすかったです。
私のお気に入りのキャラは、スコット牧師は別格としてエイカーズでした。
兄と仲間の全てを失ったノニーを守り続ける優しさがイケメンすぎました。男子たるもの、かくありたいです。私みたく女装とかせずに(笑)
もちろん、マイクも外せません。一見わからずやの頑固オヤジなんですが。その実、男気あふれる良キャラでした。大好き映画『ニューヨーク1997』のタクシー運転手・キャビーも演じていらっしゃったアーネスト・ボーグナインでしたし。
憎めない風貌が登場するごとに『ニューヨーク…』での「バンド・サウンド・ブギー」が脳内リフレインされて困りました。
そして、フラグも立っていないキャラが、スコット牧師含め、非業の死を迎えるんですよね。その意外性が不条理と残酷さを引き立たせていました。
クライマックスで、牧師の「これ以上何をお望みです!我々は自力でここまで来た!あなたの助けは借りなかった!助けてくれとは言いません!だが、邪魔だけはしないでくれ!ほっといてください!どれだけ血を流せば満足なさるんです!あと何人の命を…まだお望みですか!」の叫びは、信仰の元に多くの命を奪っていった“呪われた神の歴史”への憤りを訴えていたと感じたのですが、如何に?てか、この期に及んでも「(神の存在を)信じてたんかーい!」と、可哀想に思いました。
(ここが、最初に記した「非難されなかったのかな?」と心配したところです。明らかに神への冒涜や挑戦と感じたので)
でもね、私は「もっと言うたれ!」と思ったんですよ。神さまなんて全く信じてないし。やらかすことと言えば、現在進行形を含めた歴史を顧みても、ろくでもないじゃないですか。神さまなんて、信仰なんて。なので、むしろ憎んでさえいるし。こんな不信心で不謹慎なこと思う私こそ、自分の身の心配しろし!なんですが。
と言うか“否定”ではなく、解釈の違いなの?スコット牧師。だったら、私の見当違いですよね。
神さまと宗教関係者の皆さま、ごめんなさい。←急に弱気
幾多の苦難を乗り越えてきたからこそのハッピーエンドに安堵しました。そして音楽。ジョン・ウィリムズの手によるものだったんですね。さすが巨匠のお仕事です。
余計なことなんですが。本作、3ヒロインのお尻と太腿が(*´Д`)ハァハァ…もとい!眩しいんですよね。狙ってる?狙ってますよね?狙いましたよね?ロナルド監督。絶対にだ!ノニー、リンダ、スーザンの三連発ですもん。梯子を上るシーンのアングルなんて、本当に(*´Д`)ハァハァ…もとい!ハラハラドキドキでしもん。
今回のレビューは、ここを含めて、だいたい2200文字。このくらいがちょうどいいんですよね。数々の反省から少しは学びました。でも、考察はもっと学ばなきゃ。
また余談です。
過去超大作を観て思ったです。映画って、年間どのくらい公開されているのかな?と興味深く思って調べてみました。
だいたい年間600本~800本くらいらしいですね。
当たり年の2019年では、洋邦画合わせて、なんと!1278本とのデータがありました。もし年間平均約800本で、1本を2時間と荒っぽく仮定すると、総計1600時間ですよね。日数で言うと67日。その中で興味を持ったのが2割として、興味ある映画を1年分観るだけで、1日14本(28時間)観なきゃきゃいけないってこと×本格的商業映画を代表するハリウッド黄金期(米国映画だけで年間400本超え)からだけでも95年の歴史。興味ある映画を全て観終えるのは、物理的にほぼ不可能かも。←計算と理屈合っていますか?中・高通して数学が赤点だったので、全く自信ないです…(^_^;
もはや日本一過酷な「大峯千日回峰行」レベルの苦行。人生はとことん短い。人間なんてミトコンドリアのようなものだ。
(計算、合ってますか?私にとっては数字の計算こそが苦行です)
と、ここは約500文字。本文をこのくらいコンパクトにまとめろし。
kossyさん、コメントありがとうございます。
映画だけでもそんな感じなのに、そこへ持ってきて音楽や文学を加えると、とんでもな時間になりますよね。
芸術を堪能するには、人生なんてあまりにも短いですよね。