「旅路の果て」ボイジャー 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
旅路の果て
クリックして本文を読む
この映画のサム・シェパードは中折帽を常に被って、ハードボイルド映画の登場人物のようないでたちで、実に渋い。彼は劇作家としてのキャリアも長いが、劇中では意外や芸術に理解のないエンジニアの役を演じている。
この頃のジュリー・デルピーの透明感は特筆すべきものがある。
以前TVで見たのは随分前のことなので、冒頭の旅客機の不時着のくだりとかは完全に忘れていた。だが終わってから振り返れば、すべてが運命の転変に導かれるために巧妙に配された布石であったことがわかる。初見の際は終盤に衝撃を受けたが、今回物語の核心を知った上で見ると、あらゆるシーンがはかなく痛ましさに満ちているように思える。旅の終焉の地がギリシャだけに、ギリシャ悲劇のイメージも重なる(「オイディプス」)。
実らぬ愛の呪縛に囚われた男女の道行きを、情感豊かに語り尽くした名篇である。
コメントする