ペパーミント・キャンディーのレビュー・感想・評価
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重い。けれど観終わった感じは悪くない
韓国の40歳男性の後半20年の人生を振り返る映画。なぜ20年ぶりのピクニックのシーンから始まるのか、なぜ彼だけ背広なのか、なぜ叫ぶのか。まったくわからないまま、観客は主人公といっしょに時間を遡っていく。
書くと簡単そうだが、この手法を成り立たせたのは、けっこうな脚本の技術なのではないか思う。なにせ、観客は何もわからないのだから。さらに、一気に昔に遡ってそこから今に至る経緯を描いていくのではなく、順々に遡っていくオムニバス形式の6話という形で、観客に全てを伝えようというのだから。
主人公の人生の背景は重い。全斗煥政権下での学生弾圧の一兵卒として、その後の人生が変わるような経験をする。それは、彼のせいというにはあまりにも厳しい。嵐に巻き込まれたという表現が一番あっているのではないか。我々は、この過酷な時代にいくつもあったのであろう悲劇のひとつを追体験する。
「1987、ある闘い」「タクシー運転手」に続き、韓国の暗黒時代を再び体験することになった。
重い話で救いはないが、観終わった後の感じはなぜか悪くない。この監督には「オアシス」に続いて再びこの感じをもらった。悲劇の名手なのだろうか。拍手。
私的な話だが、アップリンク吉祥寺 初見参。長く続く映画館になることを期待しています。
七変化=ソル・ギョングでお腹いっぱい
『オアシス』を先に見てからの鑑賞となりました。
なので今回の主役は、あの映画の青年がそのまま歳を重ねた姿なのかなと思うほど、ダメダメっぷりを引き継いでいるように思いました。
ところがところが、時間を遡り、いちばん若い頃のピクニックの場面と比較すると全然違います。
爽やかな、花を愛でる好青年。
そのギャップが凄い。
後に、まるで北野武映画がしっくりくるような、あの狂気じみたチンピラになるなんて。
着実に人格が変わっていきました。
2回見ると、どうしてそんなふうに変わってしまったのかが、より味わえて面白いと思います。
演じているソル・ギョングの演技力に魅了されっぱなしの2時間でした。
人生の分岐点を追い続けた映画だと思います。
あんなに深い傷はなくとも、きっと誰にでも「あの時…」と別の道を選んでいればと 悔やむ瞬間があったはず。
結論なんて何も出ない、ハッピーエンドにもならない映画だったのですが、なんかこう主人公に愛着が湧く不思議な作品でした。
不溶性倦怠感
私はこの映画を発見したとき悲しかった。あなたがディレクターから1枚の映画を選ぶだけであれば、ここにあります。終わりから終わりまで私たちを魅了する忘れられない傑作。これらの逆戻りを逆手にして、私たちは、この苦痛を感じるまで、彼の不溶性倦怠感の源に到達しようとするために解読し続ける男の過程を通して、韓国の暗い顔を探索する。
あなたをゆっくりと殺している目に見えない、不可解な、治癒不可能な、そして致命的な病気があります...
未来へと歩みを進めることは、とても恐ろしい。
「タクシー運転手」と合わせて、早稲田松竹で。
人生に絶望し、今にも命を絶とうとしている男。
その人生に何があったのか、現在から20年前までを遡りながら見せていく。
正直、とても地味だし分かりやすいとも言えない。
けど見終わった後もずっと余韻が消えず、なんだかずっと考え続けてしまう。
こんな映画が、今の日本の「カメ止めブーム」ばりに韓国では異例の大ヒットを記録したらしい。
韓国の映画界と、観客の感性はほんとに凄いと改めて感服。
映画が本当なら、光州事件では軍人だけじゃなくて兵役中の若者も軍として市民の“制圧”に動員されたらしい…。
普通の若者が、その時たまたま兵役中だったってだけで、一般市民を殴ったり銃を向けたりするなんて…。
そりゃ主人公みたいに人生狂っちゃう人もいるだろうな…。
そして何より、「未来へと歩みを進めることはとても恐ろしい」と痛感…。
今日の幸せや当たり前は、いつ奪われるか分からない。
世の中にはどうしようもない事もあるけど、国民を守るべき国が、国民の未来を奪うなんてこと、やっぱりあってはならないと強く思う。
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