ペパーミント・キャンディーのレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
物語の冒頭には1999年の、人生に絶望しきった40代の主人公が登場する。
「俺はなぜこうなったんだ、俺はもどりたい!」
「俺の人生を台無しにしたやつを、誰か1人道連れにしてやりたい。でもその1人を選ぶのが難しい。」
そんな発言のあと、1995年、1987年、1984年、1980年…とどんどん年代をさかのぼって彼の人生が描かれてていく。
おそらくそこがミソなのだろうけど、なかなか「俺の人生を台無しにした」人物はあらわれない。
それどころか、さかのぼってもさかのぼってもどこか主人公には卑屈さや投げやりさが感じられて、共感するのが難しい。
最後の最後に、彼に先々までつづく傷を負わせた瞬間が出てくるが…。
先に「バーニング」を鑑賞してからこちらを観たけれど、いずれも時代の空気感を重んじているのだなと思った。登場人物の個人の罪や、孤独というよりも、もっと逃れがたい、今の時代が生んだ罪やさみしさというか。
重い後味が残ったけど、先々も思い出しそうな映画だと思う。
韓国の影の歴史
重い!面白かったのですが、しんどい映画でした。あと長い。
オープニングで、40歳くらいの、人生にドン詰まった主人公・ソンホがオープニングで列車に向かって投身自殺をカマします。そこでソンホが「あの日に帰りたいッッ!」と荒井由美ばりの魂の叫びをあげると、時間がグルグルと後戻りしていきます。ガチの後戻りか、走馬灯かは観手の解釈に委ねられると思います。
そんな感じて、劇中の現代1999年から、94年、87年、84年、80年…と時が遡ってゆき、それぞれの時代のエピソードが語られます。
ソンホは仕事も結婚も失敗し、希望なく死を選んでしまいます。なぜ彼が追い詰められたのか。時間が巻き戻ることにより、その理由が少しずつ明かされ…ないのが、本作のユニークなところで、正直退屈なところでした。
だって、ずっとソンホは人生投げやりなんですもの。心から愛する人を選ばずに明らかに投げやりに結婚したり、明らかに合わない警察の仕事をしたり。そして毎日明らかに苛立っている。いくら遡っても幸福度ゼロです。
ソンホの秘密が明らかになるのは80年。終盤です。ソンホは光州事件に兵士として参戦していました。ここで体験したぬぐいきれない悲劇が彼の人生を変えてしまった。この体験によって、彼は終生罪悪感に苛まれることになったのでしょう。
『タクシー運転手』を鑑賞し、80年に韓国で光州事件という、内戦のような事態が起きていたことを知りました。兵士が市民を鎮圧するのは、事件というよりもシビルウォーですよね。
韓国が抱えたトラウマは、ソンホにも消せないトラウマを与えてしまったのです。
ソンホが遡った歴史は、韓国が近代化していった歴史だと思います。街並みがどんどん近代的になっていく姿も描かれていたように見えましたし。しかし、ソンホはその陰に追いやられていた傷を忘れずにずっと抱えていました。その意味では、ソンホは韓国の影の象徴のように感じました。
本作は終盤にグッと面白くなります。言い換えれば、終盤までは退屈でした。鑑賞後、本作が2時間ちょいの長さと知って驚愕。体感的には3時間のディアハンター越えでしたよ!
ソル・ギョングの若返りメイクは凄すぎる
『メメント』以前、とは言っても1年前、にもこんな時間の逆行映画があったんだな。エピソードの間には列車の風景。しかも逆回しによる映像。NHKとの共同制作ということもあるせいか?鏡を多用して左右逆になるシーンも多い。
まずは3日前、小さな事業の社長であるキム・ヨンホはなけなしの金をはたいて拳銃を買い、自分を陥れた誰か1人を殺そうとしていた。別れた妻、共同経営者、そしてサラ金業者など、しかし、誰でも良いのになかなかそのターゲットを選べなかった。そして危篤状態にあった初恋の相手であるスニムを見舞う。
1994年は会社設立当時。1987年は刑事時代。1984年は新米刑事の頃。光州事件のあった1980年では兵役時代の頃、ここでは誤って女子高生を撃ち殺してしまうエピソードがショッキング。全体的な繋がりと言えば、初恋の相手ユン・スニムに関してのみ。
そして1979年。1999年と同じくピクニックのシーン。徴兵される前、工場での仲間たちとだ。そして「ここは見覚えがある」と、まるでタイムパラドクスを扱ったような台詞。鉄橋を見つめ涙を流すなんてのは、将来、自分の悲惨な姿を予知できたのであろうか?軍隊時代とこのシーンのおかげで、どうして1984年に訪れてきたスニムに冷たい態度を取ったのかがわかってくる。ただ、女子高生を殺してしまったというトラウマは2回目を鑑賞しないとわからないと思う。
不溶性倦怠感
未来へと歩みを進めることは、とても恐ろしい。
「タクシー運転手」と合わせて、早稲田松竹で。
人生に絶望し、今にも命を絶とうとしている男。
その人生に何があったのか、現在から20年前までを遡りながら見せていく。
正直、とても地味だし分かりやすいとも言えない。
けど見終わった後もずっと余韻が消えず、なんだかずっと考え続けてしまう。
こんな映画が、今の日本の「カメ止めブーム」ばりに韓国では異例の大ヒットを記録したらしい。
韓国の映画界と、観客の感性はほんとに凄いと改めて感服。
映画が本当なら、光州事件では軍人だけじゃなくて兵役中の若者も軍として市民の“制圧”に動員されたらしい…。
普通の若者が、その時たまたま兵役中だったってだけで、一般市民を殴ったり銃を向けたりするなんて…。
そりゃ主人公みたいに人生狂っちゃう人もいるだろうな…。
そして何より、「未来へと歩みを進めることはとても恐ろしい」と痛感…。
今日の幸せや当たり前は、いつ奪われるか分からない。
世の中にはどうしようもない事もあるけど、国民を守るべき国が、国民の未来を奪うなんてこと、やっぱりあってはならないと強く思う。
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