「主人公と共に走馬灯を観る」ペパーミント・キャンディー sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公と共に走馬灯を観る
キム・ヨンホという男の人生が巻き戻されていく映画。彼の人生をぶち壊した「道連れにしたい1人」(本人は絞れないと言っているが)は一体誰なのか。彼の20年分の走馬灯を共に観ながら考えさせられる仕掛けになっているのだが…。
彼の人生が「壊れた」のは、どの瞬間なのか…。うまくいっている様に見えるあの場面の時点で、本当はもう壊れているのではないか…。というより、そもそも彼の中に、自分の人生を選択しようという気持ちは存在していたのか…。
象徴的な「犬」の描き方と相まって、観ている内に次々と膨らんでくる疑問は、そのまま「おのれの人生はどうなのだ?」と、自分への問い返しとして跳ね返ってくる。
「自分の力が及ばない(ように感じてしまう)、社会情勢や組織や神などに対して、私は、あきらめや隷属や冷笑以外、どのような振る舞いをすればよかったというのだ!」
ファーストシーンで「帰りたい」と叫ぶ主人公の心のうちでは、そんな疑問が渦巻いていたのではと思わされる。
この後、「オアシス」や「シークレット・サンシャイン」につながるイ・チャンドンらしさの原点を見た思いだった。
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