「20年の時を経たピクニック」ペパーミント・キャンディー talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
20年の時を経たピクニック
<映画のことば>
俺の人生を壊した奴は多すぎて、一人選ぶのは大変だ。
一人の青年・ヨンホをすっかりねじ曲げてしまったもの…。
それは、おそらく軍事政権下という特異な事情もあったと思うのですが、ヨンホにとっては人間的な自然な情愛の通じがたかったであろう軍隊での生活(人間関係)や、その後にヨンホが身を転じた、およそ法の執行機関と呼ぶに値しないほど腐敗しきった警察組織とであったことは、疑いのないことと思います。評論子は。
もともとは、花を愛でる気持ちを持ち、草花の写真を撮ることを夢にみていた一人の純真な青年が、ねじ曲げられ、完膚なきほどにまで人格を破壊され、ここまで荒(すさ)んで無軌道にすらなってきたプロセスが、何とも心に痛い一本になりました。評論子には。
そして、その変化・変遷は、20年前と、20年後との2回のピクニックに、端的に象徴されるのでしょう。
映画作品としても、現在から過去に向かって、だんだんと時間軸(因果)を遡るという構成は、ヨンホの人柄が静かに、しかし確実にねじ曲げられてきた過程をありありと描くには、優れた手法であったと思います。
加えて、一見では爽やかなイメージのお菓子である邦題の意味が、しっかりと回収されるという点も、映画作品の構成として、素晴らしかったと思います。
本作は、別作品『オアシス』が素晴らしかったイ・チャンドン監督の手になる一本ということで、鑑賞することにしたものでした。
そして、その期待は、少しも裏切られなかったと言うべきでしょう。
文句なしの秀作であったと思います。
今晩は。
素敵なレビュー、拝読しました。
”その変化・変遷は、20年前と、20年後との2回のピクニックに、端的に象徴されるのでしょう。”
一人の男の人生を見事に描いた映画でしたね。
韓国映画って、ホントにレベルが高いと思います。これは幾つかの書籍から学んだ事ですが、韓国の観客の映画を観る審美眼が高く、一作ヒットを出しても、ナカナカ次作を作れないくらい、映画界自体の意識が高いと聞いています。
何時も、ありがとうございます。では。