劇場公開日 2023年9月8日

「後味は苦いけど、傑作」ペパーミント・キャンディー 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0後味は苦いけど、傑作

2023年11月19日
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鑑賞方法:映画館

イ・チャンドン監督の出世作を初見。製作当時の1999年から、過去20年間の韓国現代史(光州事件、民主化運動、漢江の奇跡、IMF危機)を背景に、一人の男の人生を描く。
まず何よりも、現在から過去へ順々に遡っていく構成・脚本が秀逸。主人公の境遇や言動、人間関係、さらにはキーアイテムの存在も、なぜそうなったのかを解き明かしていく逆再生ミステリーの趣向。
その映像化を可能にしたのが、主人公ソル・ギョングの演技力。青年時代の気弱さ、刑事の頃のキレ方、羽振りが良いときの横柄さ、やさぐれた現在と、境遇に応じて変化しつつも、芯の部分では一貫性を感じさせ、説得力をもって演じきっている。
女性陣も、それぞれの役柄を素直に表現して、好演。個人的に一番好みなのは、群山の飲み屋の女の子。
さらには、イ・チャンドン監督の演出力。見せ場での長回し、しとしと降る雨、闇の中で体を合わせる男女など、70年代の日活映画(神代辰巳、藤田敏八など)を思い起こされた。
男が最後はどうなるかわかっているだけに、後味の苦みはきつい。しかし、本作が傑作であることは間違いない。これまで敬遠してきたが、イ・チャンドン監督の他作品も観てみたい。

山の手ロック