劇場公開日 2023年9月8日

「【”人生は美しかった筈・・。あの頃に戻りたい・・。”真面目だった兵士、刑事だった男の転落の人生を近代韓国の闇多き20年間を背景に、韓国の名優、ソル・ギョングが見事に演じきった作品。】」ペパーミント・キャンディー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”人生は美しかった筈・・。あの頃に戻りたい・・。”真面目だった兵士、刑事だった男の転落の人生を近代韓国の闇多き20年間を背景に、韓国の名優、ソル・ギョングが見事に演じきった作品。】

2023年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 私が、ソル・ギョング氏の存在を知ったのは、2017年公開作の「名もなき野良犬の輪舞」(お客さん、私一人・・・。)と、「殺人者の記憶法」(お客さん、私一人・・。)である。
  特に、「殺人者の記憶法」でのソル・ギョング氏の(当時のパンフを読むと)極限まで減量した姿に”誰だ、この俳優は!”と思ったモノである。
  それ以降のソル・ギョング氏出演の作品は、総て劇場で鑑賞する事に決めた事を思い出す。
  そして「シルミド」を始めとした彼の作品を、配信にて少しづつ鑑賞している。ー

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作の作品構成の見事さには舌を巻く。
冒頭の、ソル・ギョング演じる人生が破綻した男が、且つての級友たちとのピクニックに乱入するシーンと、彼が夢溢る若き日のピクニックとの連動シーンとの見事さ。
ー ”あの頃・・”と絶叫するソル・ギョング演じるキム・ヨンホの列車が近づく中での姿。-

・そして、物語は1999年のピクニックシーンから邂逅するスタイルで描かれる。
ー キム・ヨンホが若き,兵士だった時の光州事件(作中では、事件の名前は出ない)から始まる韓国の近代の負の歴史を背景に、キム・ヨンホが自国の体制について疑問を抱き、安寧なる道を捨てて、悪なる道に身を委ねていく過程。
 重ねて書くが今作では、当時の韓国の政治体制に対するメッセージは明らかには描かれない。が、それ故に真面目だったキム・ヨンホの転落の人生を描く今作の監督、イ・チャンドンの手法が光るのである。ー

・「ペパーミントキャンディー」の劇中での使い方も絶妙に巧い。
ー 幸せだったキム・ヨンホが恋人で、後に妻となる女性に与えたペパーミントキャンディー。彼の人生を象徴するアイテムである。ー

<今作は、韓国の近代の光州事件を代表とする負の歴史に、正面から敢えて光を当てずに、それらの事件に人生を狂わされた、国の為に真面目に生きて来た男の生き方にスポットライトを当てた見事なる作品である。>

NOBU
CBさんのコメント
2023年2月10日

> 見事なる作品である
ホントですね〜。
レビューを拝見し自分のレビューも読み、ありありと観た時のイメージが蘇ります。ということは俺にとって、いい映画だったんだなあ。
しかし、劇場独占鑑賞が多すぎて、うらやましいじゃないですか!

CB