「韓国の影の歴史」ペパーミント・キャンディー kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国の影の歴史
重い!面白かったのですが、しんどい映画でした。あと長い。
オープニングで、40歳くらいの、人生にドン詰まった主人公・ソンホがオープニングで列車に向かって投身自殺をカマします。そこでソンホが「あの日に帰りたいッッ!」と荒井由美ばりの魂の叫びをあげると、時間がグルグルと後戻りしていきます。ガチの後戻りか、走馬灯かは観手の解釈に委ねられると思います。
そんな感じて、劇中の現代1999年から、94年、87年、84年、80年…と時が遡ってゆき、それぞれの時代のエピソードが語られます。
ソンホは仕事も結婚も失敗し、希望なく死を選んでしまいます。なぜ彼が追い詰められたのか。時間が巻き戻ることにより、その理由が少しずつ明かされ…ないのが、本作のユニークなところで、正直退屈なところでした。
だって、ずっとソンホは人生投げやりなんですもの。心から愛する人を選ばずに明らかに投げやりに結婚したり、明らかに合わない警察の仕事をしたり。そして毎日明らかに苛立っている。いくら遡っても幸福度ゼロです。
ソンホの秘密が明らかになるのは80年。終盤です。ソンホは光州事件に兵士として参戦していました。ここで体験したぬぐいきれない悲劇が彼の人生を変えてしまった。この体験によって、彼は終生罪悪感に苛まれることになったのでしょう。
『タクシー運転手』を鑑賞し、80年に韓国で光州事件という、内戦のような事態が起きていたことを知りました。兵士が市民を鎮圧するのは、事件というよりもシビルウォーですよね。
韓国が抱えたトラウマは、ソンホにも消せないトラウマを与えてしまったのです。
ソンホが遡った歴史は、韓国が近代化していった歴史だと思います。街並みがどんどん近代的になっていく姿も描かれていたように見えましたし。しかし、ソンホはその陰に追いやられていた傷を忘れずにずっと抱えていました。その意味では、ソンホは韓国の影の象徴のように感じました。
本作は終盤にグッと面白くなります。言い換えれば、終盤までは退屈でした。鑑賞後、本作が2時間ちょいの長さと知って驚愕。体感的には3時間のディアハンター越えでしたよ!