「独白で語れる恋ではないはず。」ヘッドライト よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
独白で語れる恋ではないはず。
フランソワーズ・アルヌールを最初に観たときは、ジュリエット・ビノシュかと思った。両者の若い頃は似ている。
映画で描かれている物語を、自らの倫理観に照らして批判する物言いが目障りな今日この頃。作品の時代性、製作された国や地域の文化的・宗教的な背景に頓着せずに、登場人物の不道徳な行為を批判したり、差別用語の使用を非難することは、映画のテクストとしての受容の仕方として貧困の極みである。
しかし、堕胎後の容態が悪化して命を落とすアルヌールに対して、ジャン・ギャバンのその後の描かれ方は、あまりにも何事もなかったかのような生活ぶりである。以前から冷え切った夫婦関係にもそれ以上の変化があったようには描かれていない。相変わらず出会いのドライブインに立ち寄り、仮眠をとり、終わった恋を回想している。
他人にしみじみと語ることができるような恋の終わりではなかったはずである。ギャバンのモノローグが入ることによって、彼に罪の意識があるようには見えないのだ。彼のその後を、もっとどん底に落とさなければ、この悲恋を観てきた者たちはカタストロフを得られない。
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