「21世紀に北京の55日が繰り返されないことを切に祈りたい」北京の55日 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
21世紀に北京の55日が繰り返されないことを切に祈りたい
1900年の北京
清朝末期の義和団の乱における北京の外国人居留地の55日間に及ぶ籠城戦を描く
後半の攻防戦は圧巻のスペクタクルで今では絶対に撮れない映像が展開される
CGにはない本物の迫力に溢れている
この動乱自体は教科書にも載っている程の大きな意味をもっている
簡単に言えば、世界情勢も知らず旧秩序での体制温存だけを求めて、日本でいえば攘夷そのものをなんと20世紀の始めに本格的にやってしまった動乱だ
もし明治維新がなかったら、日本がこうなっていたかもしれない
この40年も前に日本は攘夷の無謀さを知り、開国富国強兵に努め、この動乱には列強側に名前を連ねている
外交と軍事力は車の両輪であることが本作では明確に示されるシーンもある
列強からの内政への干渉を防ぎ外国に伍していく国家となるために、何故に明治維新に相当する革命を中国人は無し得なかったのだろうかと様々な考えが脳裏に巡らされる
この動乱に於いては日本陸軍の柴五郎中佐率いる日本兵の勇敢さ礼儀正しさと規律、その活躍ぶりは各国より称賛を浴びたことは有名だ
本作でも彼は有能な軍人として描かれており、若き伊丹十三が演じており列強に互して全く遜色のない頭の切れるで堂々とした軍人ぶりをみせてくれる
北京駐屯の米国海兵隊の大尉の亡き中国人妻との12歳の娘テレサが妙に現代的な美少女で目を引く
彼女はこの動乱、ひいては近代社会に生まれ変われず自滅していく国の中で翻弄される中国の民衆を象徴している
彼女は旧弊に満ちたこのような土地を離れ自由の地アメリカに渡る事を夢みているのだ
ラストシーンで彼女は、戦死した父に変わって主人公の米国海兵隊少佐の一緒に来いと差しのべる手に、満面の喜びを浮かべてすがるのだ
それから120年
21世紀の中国は世界の大国となり、米国と覇権を争う存在となった
しかしその内実はどうか?
結局のところ、西太后の清朝のような国家なのではないのか
21世紀に北京の55日が繰り返されないことを切に祈りたい
美少女テレサは今も差し伸べられる手を待っている