「隠れた傑作、埋もれたままではもったいないです!」ブロンコ・ビリー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
隠れた傑作、埋もれたままではもったいないです!
面白い!見終わったらほっこりします
中盤の大真面目な列車強盗は腹を抱えて笑い転げます
西部劇のようで、そうじゃありません
場所は西部の田舎ですが、時代は現代です
田舎町を町から町に巡業して回る、昔の西部を再現して見せる旅芸人の一座のお話
出し物は、アパッチ族の蛇ダンス、カーボウイ輪投げの曲芸が前座、そしてブロンコビリーの馬の曲乗りと、早打ちの披露、いよいよクライマックスは回転スタンドの女性アシスタントの両手両脇の間の風船を目隠しで二丁拳銃で打つ、最後は投げナイフで股間の風船!
なかなか高度な業を見せてますが、まあショー自体しょぼくて貧乏臭い
たぶん目隠しの技はトリックありなんだと思います
それでも田舎町のチビっ子達が目を輝かせてワクワクして見ています
とっても楽しいシーンです
ある町では、親の言うこときけよ、寝る前にお祈りしろよとか、ドリフみたいなことをチビっ子達に言ってます
一座のメンバーは、みんな訳ありです
ビリーだって、給料は遅配だし、言葉は荒いし、横暴です
でもみんなビリーを慕っているんです
彼を心から信頼して、強い絆で結ばれています
ビリーというのは本名なのかは怪しいです
ビリー・ザ・キッドから拝借した芸名でしょう
本当はカウボーイなんかじゃないのは中盤明らかになります
ブロンコというのは暴れ馬のこと
つまりじゃじゃ馬です
ここまで書けばもうお分かりですね
本作はシェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」が元になっています
ヒロインがアントワネットという、また浮き世離れした名前のじゃじゃ馬女
演じたソンドラ・ロックは、イーストウッド監督作品の前作「アウトロー」で清楚な美女のチョイ役で印象的だった女性
遊び人のイーストウッドが気に入って、遊ぶだけでなく内縁の妻同然とまでした女性
自分の監督作品なので、もちろんヒロインに起用です
滅茶苦茶いい女なんですが、本作の役柄はつんけんしまくりのじゃじゃ馬です
胸糞が悪くなるほどのクソ女
それがラストシーンでは、すっかり可愛い女性になっています
はてさて、昨今の世の中では、シェイクスピアのじゃじゃ馬ならし同様、フェミニストからは攻撃されるでしょう
それが本作があまり評価されずに埋もれた傑作になっている原因だと思います
でも、観れば分かる通り決して女性蔑視の映画ではありません
訳ありの一座のメンバーと同じこと、人種や肌の色、性別を越えて人間そのもの、個人の本質を理解しあって、表面的な人間関係ではない本当の友情、愛情、恋愛を謳い上げているのです
ラストのカーテンコールのシーンは正にそれです
アメリカ国旗を無数に縫い合わせて作った急造テントは、アメリカの国の価値観はこういうものだという明確な主張だったのです
ラストシーンは空撮になってテントを張っている田舎町が俯瞰されていきます
アメリカってそういう国なんだよとイーストウッドが言っているのです
隠れた傑作、埋もれたままではもったいないです!
ブロンコビリーという同名のステーキレストランがありますね
ステーキ食べに行きたくなりました
でも一座のメンバーみたいに喧嘩で大乱闘はしませんからご安心を