ブロードキャスト・ニュースのレビュー・感想・評価
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あまりにも身近であり生きる上で大切なことばかり!
昨夜は「ブロードキャスト・ニュース」(87・米)を見ました。
隠れた傑作です。
なぜ隠れたかというと、ほとんど誰も秀作としてこの作品を挙げることがないからです。
一言で表現すると、ヒューマン・ロマンティック・コメディ・ドラマ作品です。
内容がとても濃く一瞬もダレることなく物語が綴られます。その要因は主役三人のキャラクターが極めて細密に深奥まで創り上げられているためです。
その三人のトライアングル・ラブも絡められながら、恋・愛・友情といった前向きな感情が丁寧に描き込まれています。
この作品は、ともすれば重くなりそうな時その事柄や人物像をそのままの角度で直視することを完全に避け、あくまでも爽やかに軽やかに優しい眼差しをもって見つめます。
ここには否定は全くなく、すべての面を良い角度から捉えようとする肯定的で素直な創作者の人柄が滲み出ています。
ヒューマン・ドラマとして真剣に見ることもできるし、ロマンティック・コメディとして軽妙に見ることもできる、極めて秀でた傑作だと断言できます。
女性が男性社会で働き抜く厳しさ、つらさ、そのストレスも彫り込んでおり、そのバイタリティーで己の意思を貫く姿には魅了されます。
また、ウィリアム・ハート演じるハンサムでナイスな男性は、まるで作品中で「美しく生まれてくるとは?」という永遠の問いを彼の人生で検証しているかのようです。
逆に、ルックスは冴えないが頭は良い男性が、以下に美男より過酷な人生を強いられるかを、彼がそれ故に皮肉っぽくなったことも含めて突き詰められています。
作品で描く要素が余りにも身近であり、生きる上で大切なことばかりであるため、作品世界を生きた僕はより濃く厚く感じました。
真水みたいな作品
「青春ってイイな…」と思うテレビ局ロマンス映画
「青春ってイイな…」と思ってしまうテレビ局を舞台にしたロマンス映画。
個性の強い3人がぶつかり合うことが多いので、スクリューボール・コメディの様にも見える楽しい映画だった。
ワシントンのテレビ局でバリバリ働く女性プロデューサーのジェーン(ホリー・ハンター)は、彼女と長年一緒に仕事をしてきた有能なアーロン(アルバート・ブルックス)に好かれていたが、恋愛関係というほどではない。
そんなところに、地方局の「アンカーマン」のトム(ウィリアム・ハート)が局にやって来て、この三人による奇妙な三角関係の物語になっていくのだが、仕事シーンも入り混ぜての公私にわたるドラマが描かれる。
ここで、やたらと「アンカーマン」という字幕が出るのだが、映画を観ていると所謂「ニュース・キャスター」をそう呼ぶらしい。
しかし、人好きのする甘いマスクのウィリアム・ハート、思ったことを口に出す行動する迫力ある女性のホリー・ハンター、自分の知識や原稿書きに自信たっぷりのアーロン、この3人の個性がぶつかり合って、先が想像できない展開が本当に面白い!
なかなか見事な映画を観させてもらって、嬉しい。
硬軟両派
この時代らしいというか、女性の職場進出に恋愛もついてくるトレンディードラマ。ところが、恋愛ドラマという枠には収まらない硬軟両派の生き方の違いから職業倫理、更には両党の不可避の決裂と包含という現実を突きつけてくる。
槍玉にされても然るべきウィリアムハートのニヤケ顔は説得力十分、周囲の基準を押し下げる悪魔の所業と断じられるが、他方、彼が軟派でなければ生きられなかった経緯、本番前に秘伝の「シャツ」を開け、スタジオでは恐ろしいまでの完璧さを保つ。アーロンへのレクチャーで見せた軟派の極意、いやはや侮れぬ。最後のオチ、7年後の顛末と、社会への警鐘を忘れない。
職業紹介ものとしても面白い。締め切りギリギリの編集からジョーンキューザックのアクロバティックな走り、特別番組でのフロアとスタジオのやりとり。耳から口へと流れていく言葉。「頭の中に君がいた」は名台詞である。
何よりもホリーハンターのキュート百変化。冒頭の編集シーンでの噴き出す笑顔の完璧さにやられる。泣く、焦らす、試す、企む、真面目に切り返す、叫ぶ、怒る、デレデレ、世話を焼く、周囲を気遣う、自己嫌悪、呆ける、パンスト脱ぎ捨てる、眠気まなこで電話に出る。どのカットも魅力がはちきれている。ラストの7年後では、それを抑制。凄いものだ。ダサ可愛いシャツやトレーナーまでが愛おしい。
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