「オスカルの顔が‥」ブリキの太鼓 アキよりさんの映画レビュー(感想・評価)
オスカルの顔が‥
主人公のオスカルは3歳で自ら望んで成長を止める。また、叫ぶとガラスなど割ると恐ろしい能力を秘めている。
ストーリーはオスカルの視点から始まるが、1920年〜40年のダンツィヒ自由市(現ポーランド・グダニスク)第2次世界大戦前〜後に展開して行く。
オスカルの記憶として祖母の妊娠から母親が産まれる。その母の胎内にいる頃から大人の行為に嫌気がさしている様子で記憶は鮮明に出産シーンが写し出される。
顔は初老の老人の様な顔立ちで愛くるしさには欠けている。成長していくが大人の性的な行為や振る舞いを見ては自分は大人になってたまるかと、成長を止める口実となるように階段から転落する。
突っ込み所満載ですが、ファンタジーとして観る作品ではない。
オスカルはとにかく可愛くないです。授業中でも太鼓を叩き、注意すると叫びガラスやメガネを割りまくる。
今で言うアダルトチルドレンであり、責任を取りたくないから?3歳児に設定したあたりは、なかなか微妙なラインに感じる。
恋愛感情に自由放漫に映る母が死に、従兄が銃殺されてもオスカルは10代後半ぐらいに成長しているはずだが我が道を行く感じには同情しがたい。
しかしとうとう終盤に父親が亡くなり完全な孤児になった事に気づいてしまう。
今更だがここで太鼓を父親の遺体と共に葬りさる事で、オスカルの成長が進み始めると。
当時の複雑な現状を観たく無いもの、逃げ出したい現状を子供の視点から上手く表現されている作品だと感じる。
人種的な問題、ドイツ人・ポーランド人・ユダヤ人・祖母は少数民族の(カシュバイ民族)と様々な民族が暮らす中でナチスが侵略してくるが、オスカルの周囲の人間が翻弄され最悪な最後を迎えて行く。特に母親が影響を受けたのでは?旦那がナチスに積極的に参加、関係を持つ従兄はナチスと対等する、母に思いを寄せる玩具店のユダヤ人の3人の男性の間で翻弄され苦しみ死んでいく。
そして強く印象にあるのが、小人症との関わりで彼らは自分を上手く利用して生き延びている。終盤オスカルとの別れのシーンでボロボロの街中を走るトラックで手を振る姿に力強いものを感じてしまった。
この作品は実にファンタジーな作品でもあるが皮肉でブラックユーモアが効いている、観客にいろんな感情を抱かせる事は間違い無いでしょう。