「船長、あんたは漢の中の漢や！」フランケンシュタイン（1994）　たなかなかなかさんの映画レビュー（感想・評価）

永遠の命を探求するフランケンシュタイン博士が、実験により怪物を生み出してしまったことで引き起こされる悲劇を描くゴシック・ホラー。

監督は当時舞台俳優として活躍していた、レジェンド俳優サー・ケネス・ブラナー,CBE。
また、主人公フランケンシュタイン博士を監督自ら演じており、製作補も担当している。

脚本には『ブロブ』『ザ・フライ2』等の脚本を担当しているフランク・ダラボンが参加している。

フランケンシュタインの怪物を演じるのは『ゴッドファーザー PART Ⅱ』『タクシードライバー』の、レジェンド俳優ロバート・デ・ニーロ。
ヒロインであるエリザベスを演じるのは『眺めのいい部屋』の、レジェンド女優ヘレナ・ボナム＝カーター,CBE。

「フランケンシュタイン」という作品名は知っていましたが、本作を観るまで正直どんな話か全く知りませんでした。成る程、こういうお話なんですねー。

原作は1818年！日本ではまだ勝海舟すら産まれてないではないですか！200年以上経った現代でも未だに生き続ける正に怪物級の文学作品ですねぇ…

さて、本作ですがまず俳優陣が良かったです！
ケネス・ブラナーはハンサムな顔立ちながら、徐々に狂っていくフランケンシュタイン博士の狂気を上手く演じていました。特に怪物誕生直前と直後で纏う空気がまるで違うのは流石！

この作品がキッカケでケネス・ブラナーと交際することになったらしいヘレナ・ボナム＝カーターも良かった。
実はこの女優さんを今まで知らなかったんですが、何処かで見たなぁと思っていると、この人『ファイト・クラブ』のヒロインやってた人なんですね。
美しい顔立ちなんですが、どことなく不穏な空気を纏う女優ですね。そこが魅力的。

本作、やたらとケネス・ブラナーとヘレナ・ボナム＝カーターのラブシーンが挿入されており、正直それがノイズになっていたと思うのですが、これただ単純にケネス・ブラナーがヘレナとイチャつきたかっただけなんじゃないの？

そして大御所ロバート・デ・ニーロ演じる怪物！
私は別にデニーロのファンではないですが、やっぱり華がある役者だなぁと思いました。メイクしているにも拘らず、彼が映るだけで画面が引き締まる感じがしました。
異形のものとして生み出された怪物の哀しみをしっかりと表現しています。
ただ、怪物誕生シーンで裸のデニーロと半裸のケネス・ブラナーがローションの中で組んず解れつしている様はコントみたいだった😅
なんであそこだけコメディみたいだったのだろうか？

あと、18世紀のヨーロッパの街並みやファッションが華やかでよかった。
当時の欧州社会には詳しくないのですが、本当にあんな世紀末みたいな世界だったんですかね？
天然痘、コレラ、転がる死体にスラム化した街に借金取りにリンチに…もうめちゃくちゃだよ！

役者や画は良いんですが、この映画の内容自体は普通です。つまらなくはないですが特別面白くもない。
神の倫理に背いた科学者の苦悩と、生みの親にすら愛されず疎まれる怪物の哀しみを、恐怖映画の中で描こうとしているのはわかったのですが、肝心の恐怖描写が中途半端。
怪物の恐ろしさが全然伝わってこない。作中で結構悪いことしてるはずなのにそれを直接描写しないので、怪物がただの傷だらけの悲しいデニーロにしか見えない。まだ女怪物の方が不気味さがあった。
そもそも誕生の段階でコントみたいなことしてる時点でもうダメ。

苦悩の狂科学者フランケンシュタインの絶望も、只の自業自得な為全然感情移入出来ない。
親友のヘンリーがやたらといい奴なので、余計フランケンシュタインのクズっぷりが露呈することに。

やたらと雪山推しなのも謎。復讐に燃えるデニーロが雪山を歩く場面や、フランケンシュタインがアイスクライミングする場面を空撮による引きのカメラでダイナミックに映していますが、それいる？
映画の雰囲気に合ってなかった。ただなんとなく撮りたかっただけなのでは？
そもそも怪物とフランケンシュタインの会話を雪山でする意味はあったのか…？

怪物がフランケンシュタインの死に悲しむラストシーンも唐突すぎてポカン。
実は怪物は父親を愛しているのだとわかる場面を一つや二つ描写しておかないと。感動的な場面が凄い滑った感じになってました。

全体的に中途半端な印象を受ける映画ですが、本作のベストキャラは最初と最後にしか出番のない船長でしょう。
勝手に死んだフランケンシュタインを手厚く葬り、海に落ちた怪物に手を差し伸べ、最終的に部下の命を優先して帰路につく。この人が主役でいいんじゃない？

つまりこの映画は、この題材でこのキャストなら、もっと面白いものが出来てもいいのになー、勿体ないなー。船長かっこいいなー。ヘンリーいい奴だなー。という映画です。
出来が悪くも良くもない普通の映画。