フランケンシュタイン(1931)のレビュー・感想・評価
全11件を表示
「It's alive!」と絶叫する歴史的瞬間
フランケンシュタインの怪物といったら、ボリス・カーロフが演じた怪物以外あり得ないというくらい世界的に認知されている。
あまりにも浸透し過ぎて、その後フランケンシュタイン映画を作る人間は、真似をするにしろ全然違うものを作るにしろ、良くも悪くもボリス・カーロフが演じた怪物の影響下に置かれることになってしまった。
自分はいっぱしの(?)モンスター映画マニアだと自負している人間なのだけれど、今までボリス・カーロフ演じるフランケンシュタインの怪物を断片的な映像でしか観たことがなかった。
これではマニアの名がすたると思い、Blu-rayディスクを購入して初めて作品全篇を通して観た。
凄かった。
監督のジェームズ・ホエールと、怪物を演じたボリス・カーロフ恐るべし。
噂に違わぬ傑作だった。
正直、観る前は「なんだかんだ言っても戦前の作品だし、古臭くて陳腐で資料的価値しかないんじゃないかなあ」という不安があった。
自分の中にあるモンスター映画の古典的名作というイメージが無残に打ち砕かれてしまうんじゃないかという恐怖があった。
でも、観始めてすぐにそんな不安や恐怖は杞憂に過ぎなかったと分かった。
ラストの燃え盛る風車小屋のシーンまでの息もつかせぬ緊迫感。
ボリス・カーロフ演じる怪物の驚異的な造形センスもさることながら、狂暴な禍々しさと赤子のような無垢な愛らしさを同時に持つそのアンバランスさに目が離せなくなる。
ここには疎外され迫害される異形のものへの限りない共感と愛情がある。
なぜなら監督のジェームズ・ホエール自身が疎外され迫害されるものだったからだ。
Wikipediaによれば、ジェームズ・ホエールは今よりもずっと差別や偏見の激しい時代に同性愛者だということを公表していた。
そして、57年に自宅のプールで溺死体で発見され、警察は自殺と断定した。
苦悩の多い人生だったのだと思う。
だけど、ジェームズ・ホエールが生み出したフランケンシュタインの怪物はモンスター映画における空前絶後のキャラクターとしてこれから先も世界中のホラー映画ファンに愛され続けることだろう。
ジェームズ・ホエール以て瞑すべし。
劇中、若き科学者フランケンシュタインが、繋ぎ合わせた死体に生命を吹き込むという神をも恐れぬ実験に成功して「It's alive!」と絶叫する。
あの絶叫は映画史上に永遠に残るモンスターを創造したジェームズ・ホエールの歓喜の絶叫でもあるのだ。
モンスター映画が好きな方なら、どうかこの映画を観てその歴史的瞬間に立ち会って頂きたい。
だが、この映画を観るあなたの横にモンスター映画に全然興味がないパートナーや家族、友人などがいた場合、彼らはあくびをし、つまらなそうに観て、挙げ句の果てにはエンドマークが出たら「え?これで終わりなの?ふーん」などと言うかもしれない。
自分の場合がそうだった(笑)。
だが、それが何だというのか。
この映画は本来俗悪な見世物映画に過ぎなかったホラー映画、モンスター映画が、見世物であることを貫き通して芸術の高みにまで到達することができるのを証明してみせた、とてつもない作品なのだ。
分かる人だけにしかこの映画の凄さは分からないのだ。
あなたが分かる人であることを願う。
悲しきモンスターのお話… 少女とお花のシーンだけ見たことがあったけ...
ドラキュラよりフランケンシュタイン‼️
怪物、モンスターという時、一番に思い浮かぶイメージ
はフランケンシュタインだ。
もっとも、怪物には名前がなく、怪物を作った人物がヘンリー・フランケンシュタインだった。クレジットでも、主演のボリス・カーロフ氏は「The Monster」として名前が載っていた。
・・シュタインというと、アインシュタインを思い出すが、ドイツでは・・シュタインという名前は珍しくないのだろうか。(調べてみたらユダヤ系に多い名前だそうだ)
これから遠くない未来、科学がさらに進化し、無生物と生物の境が曖昧になり、無生物から生物を生み出す技術を得たら、死者を復活させる技術も開発されるかもしれない。
その時、愛する人を亡くした人々がどんな行動をとるのか。
そんな技術がない現代に生きている私は幸せかもしれない。
不朽の名作
大好きな作品。なんで生涯ベスト5に入れてないんだ、と自分でツッコみたいくらいには好きです。
他レビュアー様方が仰っているように、後世に与えた影響や、原作をホラー映画として昇華させた功績はもちろん素晴らしいものです。ですが、何よりこの映画の凄いところは、現代においても観る者の感情を揺さぶり、印象的な各シーンを強烈なまでに心に刻み続けているということ。シンプルに映画として非常に面白い、エンターテイメント作品なのです。
モンスター役のボリス・カーロフの表現力に心を鷲掴みにされます。特殊メイクのせいで表情は出しづらいはずなのですが、モンスターの喜怒哀楽が伝わってきます。ラストのクライマックスの頃にはモンスター側に感情移入し、涙した人も多いのではないでしょうか。
大掛かりなセットは見応えがあり、博士が研究の為に引き籠もっている塔も雰囲気たっぷりで、世界観をしっかり固めています。照明も素晴らしく、恐怖を煽るような照明の当て方は各シーンに芸術的な印象すら与えています。
ホラー映画としてだけでなく、モンスターの悲劇の物語としても素晴らしい名作。単なる古典映画として片付けるにはもったいない、非常に見応えのある作品です。
今の人が認識しているフランケンシュタインの怪物
メアリー・シェリーが原作の小説を書いた時代は女性が創作活動をすることもホラー作品も受け入れられない時代であった。
そんな中でも原作を書き上げたメアリー・シェリーは作品になんらかの想いを込めたことだろう。世間に受け入れられない怪物に自身を含めた全ての女性が重なったであろうことは容易に想像がつく。
メアリー・シェリーはフランケンシュタイン博士が生み出した怪物の物語をホラーだとは思っていなかったと思われるが、読んだ者は恐ろしい物語だと認識したようだ。
そして本作である。もうただのゴシックホラーとなってしまって、メアリー・シェリーは悲しんでいることだろうが、この作品が後世に残した功績は大きい。
なぜなら、今の我々が認識しているフランケンシュタイン博士の怪物は、この作品の怪物だからだ。
物語も、怪物の見た目も、ボリス・カーロフが演じた動きも、今の人はほぼ全て、これがフランケンシュタインだと認識している。
それだけこの作品がインパクトのあるものだったことを表す。
映像の粗さなど問題はあるものの、それなりに面白く観られることも素晴らしいと思う。
ホラーとして娯楽作に徹するために、余計な情感を込めなかったのが良かったのかもしれない。博士にも怪物にも。
悪く言えば、尺が短く「軽い」作品ではあるけれど、これはこれでいい。
【90年以上前の作品であるが、墓場から複数の死体により作られた怪物の不気味さ、漂う雰囲気。そして、哀しき怪物の暴走する姿など、一見の価値ある作品。】
■永遠の生命を追い求めるフランケンシュタイン男爵の息子、ヘンリーは、墓場を掘り返し
て得た、いくつもの死体を組みあわせて人造人間を造り上げることに成功する。
だが、その頭蓋に収められていたのは、殺人者の脳だった。
蘇った死体は怪物と化し、憎悪を滾らせ、博士や民衆に襲い掛かる。
◆感想
・特殊技術が進んだ現代に観ると、特殊効果や炎、効果音などアナログな演出が余計に恐怖や異様な雰囲気を感じさせる作品である。
・因みに、怪物の名は特になく、”フランケンシュタイン”とは怪物を作ったフランケンシュタイン男爵の息子、ヘンリーの苗字から取られている。
<数年前に、ゴシック小説「フランケンシュタイン」を書いた、メアリー・シェリーの数奇な人生をエル・ファニング主演で描いた「メアリーの総て」を鑑賞してから、観たかった作品である。
資料を観ると、大ヒットをした作品だそうだが、90年前のホラー映画の定義もない時代にこの作品を劇場で観たら、そりゃ怖いだろう、と思った程の異様な雰囲気に包まれた作品である。
怪物の顔も、或る年齢層以上であれば”これぞ、フランケンシュタイン!”と言うあの恐ろしい顔で、演じたボリス・カーロフという方も、世界に名を馳せたそうである。
そりゃ、そうだろうなあ・・。>
幼い子、フランケンシュタイン。
「メアリーの総て」鑑賞後、女性作家メアリ・シェリー19歳当時の作品ということに衝撃を受け、このたび映画鑑賞。 さらに映画で衝撃を受けることになる。
フランケンシュタインという名前が、創造者の博士の名前であって、大男には名前がなかったこと。突然この世に生を受けた大男は、純真無垢の赤ちゃんと同じであったこと。
見るものすべてに興味を持ち、喜びもし、悲しみもし、怒りもする。そんな赤ちゃんの彼を周囲の大人は誰もわかってくれない。
勝ってに創造し、手に負えなくなったら抹殺する。
悲しい彼の姿が原作者メアリ・シェリーと重なり、現代の幼児虐待にも重なり、やりきれない気持ちになった。
涙が止まらない。
名もなき怪物はどこへも行けない
全11件を表示