「(ワタシ的)SF映画史上最高のオープニング!」ブラックホール Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
(ワタシ的)SF映画史上最高のオープニング!
1980年当時のワタシはすでに、「月刊サイエンス」の最新号が出ればすぐ書店で内容を全て立ち読み(値段高いし無駄に難しいので殆ど買わなかった)し、代わりに「月刊天文ガイド」を買って帰るハイパー・サイエンスボーイ(自称)でしたが、その頃の一般科学感覚では映画冒頭の”先進の”ワイヤCGによるブラックホール描画と渦巻く姿は十分に説得力あるクールなものでした… 「インターステラー」を見てより正しいブラックホール像を知っている現代の若者はこれを見て笑うでしょうが、それも40年後には同じように苦笑されるのでしょう、たぶん、てかされてくれ。
さて映画ではそのオープニング直後から、ロボコンの弟みたいな超カッコ悪い(当時もこれ見てのけぞった)ロボットが出てきてせっかくの空想科学的な雰囲気をぶち壊しますが、さらにその後にレトロかっこいい幽霊宇宙船"USS Cygnus"が登場して少し持ち直します。ワタシはこの古典ディズニー的雰囲気のある、『シャンデリア+化学プラント+巨大タンカー+内装はお城』のシグナス号になぜかとても魅かれます。そして探索する”USS Palomino”のクルーにハリウッド最高の脇役アーネスト・ボーグナインがいることが、ワタシには最大のプラスです(ただし探検同行ジャーナリストとかいう変な役)。また幽霊船のID照合に5カ国の候補が出てきますが、小ネタとしてちょっと誇らしい一瞬もあります。
しかし、そのほか・そのあとのストーリーには残念ながら殆ど褒めるところがありません。読んだ一説によると、当初「2001年宇宙の旅」や「サイレント・ランニング」のようなシリアス科学大作にする考えで制作が始まったものの、一歩先んじて大ヒットした「スターウォーズ」のスペースオペラ調にディズニー幹部が影響されてしまい、レーザガンを撃ち合う展開やダース・ベーダー風キャラ(こちらはロボットでかつ黒ではなく真っ赤)を入れさせて脚本が大混乱に陥ったとか。クールさを保った冒頭部から考えるとそんな横ヤリがとても残念ですが、米の大作にはよくあることで仕方ありません。本作は2000年代にリメイク構想があったもののポシャってますが、”ブラックホール”といういわば宇宙SF界最強のパワーワードを題名とするだけに、いざ作ろうとすると色々と思惑が交錯してしまうのかも知れません。
前述のように、本作は冒頭部以外は全てが非常にビミョーであり高い評価のできない映画ではありますが、ワタシにとっては不思議と忘れられない作品です。初見はおそらく1981年正月、今は遠い松戸輝竜会館ではなかったかと思います。