「脈々と儚く」プライベート・ライアン Ana-phylaxisさんの映画レビュー(感想・評価)
脈々と儚く
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嫌なことがあるとよく観ている映画。
冒頭のノルマンディー上陸作戦の描写の素晴らしさは言うまでもなく。
この映画がいかにアメリカのナショナリズムに一役買っているかなどは、あえて横に置いておいて。
私が特に好きなのは、眠れない兵士が問わず語りに故郷の思い出話などを語るシーンである。
「お袋がたまに早く帰っても、俺は寝たフリをしてた。お袋がそこに立ってるのに、気付かないフリをしてた。俺が今日一日どんな日を過してたか聞きたくて、せっかく早く帰ったのに、俺は目を瞑って寝たフリをしてたんだ。素直じゃなかった…」
この告白に、誰も言葉をかけることはなかった。そして次の日、彼は死んでしまう。
この何気ないやりとりほど戦争の惨さ、ただの日常の尊さを知らしめるエピソードはないと思った。
同じようにいつも母を待っていた子供時代の私も、なぜかは知らないが、淋しければ淋しいほど、すぐに母の顔が見れなかったりした。鍵が開く前から耳で母の帰宅を察知しているのに、声をかけてもらって「寝てるの?」と言われてから、わ!と起きるのが好きだった。照れ隠しなのかもしれない。
そんな、自分だけだと思っていた心理描写が、何気なく挟まれているこの映画が好きだ。
みんな誰かの子どもで、それなのに帰ることができたのはひと握り。そのひと握りのために戦い、散ってしまった多くの命。
自分にはその価値があるか?せめて毎日悔いなく生きているか?そんな風に自問自答させてくれる作品。
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