「非模範的ミリヲタによるひねくれた感想」プライベート・ライアン zeruminaさんの映画レビュー(感想・評価)
非模範的ミリヲタによるひねくれた感想
アカデミー監督賞に輝いた名作であるが、真面目に褒めても仕方ない。
以下は「愉快ツーカイな戦争映画」を愛する自分による「非模範的」な視点による感想である事をお断りしておく(笑)
まず、OPとEDにあたる墓参りシーンだが、華麗にスルー。これはラッピングのリボン、ケーキに載ってるサンタの様なもので、好きな人には良いだろうが、小生、喰えないモノに興味はナイのである。
次に”Dデイ”のシーン
これは文句のつけようがない。個人的には本作最大の見所である。
兵士個々人の様々な運命を描きながら、シーン全体はテンポ良く進んで行く。
その中でも本編に備えて、メインキャラの個性はちゃんと演出する。
ビニール袋に入れた小銃とか、銃剣にガムで鏡を貼り付けるとか、ディティールもニクイ。
「後続の為に場所を空けろ!」「出たら死ぬだろ!」みたいなやり取りも大好物。
凄惨な描写も『プラトーン』で産湯を使い『ハンバーガーヒル』をテープが擦り切れるまで見たこの身にとってはむしろ快いのである。
「助けようと引っ張ってたらいつの間にか断片になってた」はお約束だよな!
んで、タイトルにもなっているミスタ・ライアンを探し回る一連のシーン。
これらもまぁまぁ好き。
同姓同名の人違いネタは面白かったし、「実戦を知らない上層部」描写が効いている。
トム・ハンクスが突っ走ったせいで出る戦死者のシーンのねちっこさもたまらない。
ドイツ兵に「アメリカ、好き」とか言わせる辺りは思わずニヤニヤ。
映像的にも素敵な部分が多く、素直にスピルバーグすげぇと思わせてくれる。
…のだが、ラストでもないのに昔語りが炸裂したりして、この映画の方向性が確定してしまう部分でもある。
あとは、絵的なハイライトがあるといいなぁと願いつつ見続けるしかない。
前線の橋に到着!
遂にミスタ・ライアン発見!
そして「帰りたくない!」から「じゃあ皆で戦おう!」流れる様な展開。
うん、そうなると思った(笑)
(ここはマット・デイモンの好演が光る。その後は壁の花になってしまうが)
兵器も兵力も足りないが、知恵と勇気でカバーだと靴下で爆弾を作り出す一同。
橋を爆破して逃げちゃアカン理由がイマイチ分からないのは小生の読解力不足であろう。
そしてレコードをバックに死亡フラグを高々と掲げるシーン。
あーーー好き!好きは好きなんですよこういうの。
その後に必ず来る戦闘シーンが好みのものであったなら、なんですけどねぇ。
さて、
個人的に最も好みに合わなかったのがラストの戦闘シーン。
カタルシス、ゼロの上に、「アパム」のエピソードが底流してるのでホントたまらない。
虎の子のバズーカの使い方ー!リアルじゃなくていいからカッコ良く使ってくれよ(涙)
それにしても橋を落とさないとは思わなかった…あれ伏線じゃないんだ…(笑)
トム・ハンクスが拳銃を撃ち始めた時には「ああ!銃弾で着火とか?」と淡い期待を抱いてしまったよ。
あの不細工な(笑)ティーガーが転げ落ちていく所が見たかったにゃー。
(そういやパンターは何処にいたんだ?え?聞き間違いかな?)
個人的にはライアン以外全員戦死して、ライアンが橋を落とし、一人生きて帰る、で良かったのですが。
…まあ、意図してやってるんだろうけど(笑)
本作では、戦争が人知を超えた忌むべき災害として書かれている様に思える。
(一度は助けたドイツ人をラストでは撃ち殺してしまう辺り、特に。)
そして、それは正しいのだろうし、言うまでもなく現実で戦争なんてまっぴらゴメンではあるのだが…
こうまで徹底されると揚げ足も取りたくなってしまうのだよ(笑)
せめて映画の中でくらい、「人」は強くカッコいいものであって欲しいのだ。
P-51だけは息を呑むほどに美しかった。