舞踏会の手帖のレビュー・感想・評価
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青春の後ろ姿を追って
夫を亡くした未亡人が、その昔、自分が乙女だった頃に愛を囁いてきた男達を訪ねる旅に出た。でもそのリストは20年も前の自分の社交界デビューの舞踏会のもの。美しい湖のほとりで天人のような暮らしをして今も若々しい主人公とは対照的に、男達は、成功した者はごく一部で、みなそれぞれに人生の辛酸をなめ、命を落としたり、あるいは変わり果てた姿で生きていた。手帖の日付は1919年。そこから20年。世界は激動の時代だったろうし、そういうものだろうと切なかった。
主人公は最後の訪問で一番気になっていたイケメンの彼に瓜二つの忘れ形見に出会い、彼を引き取って、その養育を当面の生きがいにしたようだ。家に閉じこもっていないで外に出れば、つらいこともあるけど得られるものもあるよ、っていうことなのだろうか。私的には、彼女はこの子を大切にし過ぎて、彼女のような世間離れしたおぼっちゃま君をこさえてしまうのではないかとちょっと心配になってしまった…(たぶん私の心が汚れているからですw_ _)
幸せとは
愛を感じられない結婚生活だったと悔いる美しい未亡人クリスティーヌ( マリー・ベル )が、20年前の舞踏会当時に手帳に記していたダンス・パートナー達を順に訪ねる事に・・・。
題名から、華やかでお洒落な作品だと思って観始めたのですが、シビアな現実と向き合う主人公の姿に、身近な者への思いやりや笑顔が、周囲や自分自身を幸せな気持ちにさせるという事に改めて気付かされる、そんな作品でした。
NHK - BSを録画にて鑑賞
忘れられない青春のおもいで
ストーリーテラーの名手ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「望郷」と並ぶ戦前の代表作。夫を亡くしたばかりの若き貴婦人が、古い手帖に記せられた男性たちを探し訪ねる物語をオムニバス形式で描いた、過去と現在の移ろい。大戦前のペシミズムが色濃く反映された道程を辿り、ラストの意外な結末にひとつの人生訓が秘められている。人は愛を失っても生きていけるが、自分が抱く青春の想い出は捨て去る事が出来ないと。映画における愛と青春なんて、ありふれた題材ですが、この二つを比較したところが何ともユニークで希少価値があります。恋愛至上主義が強固なフランス映画の多くは、友情と恋愛の二者択一を題材に、そのほとんどが、恋愛優位の結末で占める印象を持ってきました。青春を共に過ごした故人の子息を養子にする貴婦人の選択には、清い友情を交わした青春時代に縋ってしまった人間の正直過ぎる姿があります。それは哀れであり、また羨ましく思えるのです。このラスト数分の為に描かれた超現実的な物語には、人生流転の縮図と青春を想い出に生きる女性の本心が見事に描かれている。
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