「壁と仲間と。」フットルース とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
壁と仲間と。
運動音痴・リズム音痴とニ重苦だけれども、この音楽を耳にすると、いつの間にか足が動き出してしまう。
そんなエモーショナルなミュージックが続きます。
筋は…。
正直、忘れていた。
こんな、田舎の街が舞台だったっけ?
トラクターのチキンレースが、おかしくも、なぜか格好いい。で、でかい!!!
麦の穂?揺れる畑の向こうに、すがすがしく見える山並み。空が大きい。
大型車。仕事用道具満載の軽トラ。
カセットテープは時代か。大音量で流して走っても、誰からも文句は来ないのだろう。
こんなにヒロインて、無茶苦茶やる人だったっけ?
中森明菜さんの『飾りじゃないのよ、涙は』に出てくる少女みたい。同類?
ファイナル・パーティでも、やたらに大口開けてキャーキャー騒いでいる。そっち、映すより、ダンスを映せと言いたくなる。
ウィラードから目が離せなくなる。
ショーン・ペン氏の実弟だとか。よく似ている。その彼が、アヒルのダンスのようなダンスを披露してくれる。うまく踊るのも容易ならざる努力が必要だが、へたに見せるのも大変だろう。
でも、レンとの掛け合いがコント。振付師がアレンジしたものだろう。目を見開いて、一生懸命真似をしようとするウィラードと、それを根気強く教えていくレンのバディがさわやか。
すごく、親近感を覚える。
レンを演じるケビン・ベーコン氏。
粗筋を読めば、昭和のアニメの主人公のような、ダンスにすべてを捧げる一本気のイケイケの主人公を思い浮かべるが、チキンレース最中にトラクターの運転に戸惑っているヌケテいる様子とか、繊細な表情がいい。
今や、誰しも認める演技派俳優。
オープニングの足だけダンス。
当時のファッションも懐かしい。足だけならと真似したくなる。
ファイナル・パーティ。
憧れ。男性はタキシード。女性はイブニングドレス。こんな風に着飾って集うこと、日本にはないものなあ。ディズニー映画に出てくる舞踏会の様。
それでいて、小気味なダンスの目白押し。皆の注目を集めてダンスするシーンもあれば、皆で踊るシーンもある。そんな仲間で盛り上がれるところが好き。『フラッシュダンス』のような独演会ではない。ダンスができなければ、素晴らしいダンスをした人に口笛とか、拍手とかすればよい。できるところだけやればいい。
レンも、アゲアゲのダンスを披露してくれるが、超うまいわけでもない。とにかく好きで踊っている。だから、周りがマネできる。
そんな一体感に、映画のすべてを持っていかれる。
そして、学生時代の仲間たちを思い出しつつ、こんな青春なかったけれど、疑似体験したくなり、映画の中盤は忘れても、ダンスだけはリピートしてしまう。
☆ ☆ ☆
”壁”
今、日本で、ブラック校則が時折話題になるが、
文句言ってくるのが、当の生徒より、親だったりする。子どもの代弁しているのかと思えば、実は「子の気持ちを考えているつもり」の、親自身の価値観の押し付けや、先走りだったりする。子は、親に隠れて、思い通りになったらラッキー、ならなくてもいいやぐらいにしか考えていない。髪型どうでもいいのだけれど、母が校則違反のツーブロックにしろとうるさいという生徒もいた。
でも、
何でも、自由になったようで、それでも、見えない何かに縛られている子ども達。
この映画の牧師のような”乗り越える壁”が見えない時代になった。
実は、壁にぶつかって、本当に大切なものを見つけ出せていた時代より、手ごたえのない壁にぶつかって、窒息している子ども達。
今の時代の方が不自由なのかもしれない。