劇場公開日 2022年3月18日

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「大人の童話、観る人を写す鏡」フォレスト・ガンプ 一期一会 xmasrose3105さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大人の童話、観る人を写す鏡

2023年1月10日
iPhoneアプリから投稿

公開当時は、まったくわたしには響かず、優等生的映画で、賞を総ナメというのも鼻白む感じだったのですが。
息子が「最近初めて観たけど、良かった」というので、きょう再観。

もちろん、作り話感は満載ですし、古いニュース映像と主人公フォレストの合成映像(風刺やジョーク)など、当時の最新技術で驚かすところも、映画=エンターテイメントとして要所を押さえています。
それ以上に、驚いたのは、わたしがまるで覚えていなかったという事実。それ以外のストーリーとか、テーマを。まるっきり刺さっていなかったのか。完全スルー。
自分があれから結婚して、親になり、いま観ると、敢えての作り話感に、いろいろ考えさせられます。

これはやはり「星の王子様」。
愛をわかっていく、その道のりが、いかに痛みを伴うか。
愛って、キラキラふわふわの甘い響きがするけれど、どれだけ覚悟が問われるか。
大体、逃げ続けて、人生は終わる。
でも愛がわからないままだと、男の子、王子様のまま。
ママはなんでもわかりやすくフォレストに教えてくれたけれど、亡くなる間際フォレストの「運命って何?」という質問に「そうねえ、何かしらねえ、それは自分で掴まないとわからないわねぇ...」。

ほんと、そうですね。

運命って、自分で掴むようでもあるし、でも流れに身を任せるもののようでもある。フォレストの人生のように。
きっとどっちもあるよね、って最後の方で彼は言います。
ママも、ジェニーも、ダン中尉も、みんなそうでした。
正解はわからない。
まずは生きてみなさいってこと。
チョコレートの箱を開けて、食べてみなさいってこと。

人に言えない弱さや狡さも、自分の中に知ることになる。
もっと素敵な未来が待っていたはずなのに、運命という嵐に、羽根のように翻弄されるだけ。
惨めな自分。見下していたフォレストの純粋さがまぶしすぎて、妬ましくて、自分がいたたまれない。
でも光のような愚直さが、フォレストの運命。立派な意思などなく、意味なんてない。
走りたいから、ただ走る。
人はその姿に勝手に「勇気をもらったよ!」
フォレストはいつも困り顔。
考えてしたわけじゃなく、何となくそうなっただけなので。
信じる者は救われる、ではないけれど、日本的に言えば人間万事塞翁が馬。
同じように流されて、ジェニーもダン中尉もどんどん暗い方へ行くのですが、すんでのところでフォレストの引力に引き寄せられるかの如く、また戻ってくる。フォレストもそれに助けられる。

なにをどう捉えるか。
なにを願うか。夢見るか。
結局はその人自身の見方だし、偶然は幸運とも不運ともなりえます。はじめは愛を外に探す。それは恋やお金や名声や体の交わりで得られると思うけれど、そこにはない。

苦しさを経て、愛は自分の中に育てる力だとわかった時、男の子や王子様は、やっと一人の人間になる。
ジェニーは、世界で一番信頼できる人間に、男の子を託しました。ジェニーも優しい女の子から、望み通り鳥になって、旅立って行った。自由になれたね。いろんな幸せがある。
戦争へのメッセージもうまくぼかされていて、諸々オトナの事情あるのでしょうね。映画作りもビジネス。生きる術をみました。したたかさも、致し方なしと勝手にお察ししました。

xmasrose3105