「大人の童話物語だった。楽しめたけれど、心から感動することはなかった。」フォレスト・ガンプ 一期一会 いなかびとさんの映画レビュー(感想・評価)
大人の童話物語だった。楽しめたけれど、心から感動することはなかった。
初公開当時、この映画が大変評判になっていることは知っていた。その後アカデミー賞で何部門も受賞したことも。しかし、私はいっこうに観る気が起こらなかった。
主人公が知的障害者で成功を積み重ねていく物語に今ひとつ共感できず、知的障害者を揶揄しているように思えたからだ。公開から30年近く経ち、私もおじいさんになった。それなりに人生経験も積んたが、今だに悩み事から開放されない。それで、この映画を観てみた。
これは大人の童話物語だ。主人公は純真な心の持ち主で、悪と性に馴染めない聖者(聖愚者)に設定されている。障害を持っているが特別な才能に恵まれ、一つの事に集中できる能力と速い脚力が彼の人生を成功へと導いて行く。しかし、名誉や富には全く無関心で、彼の唯一の望みは愛する人と暮らすことだけだ。
この映画をよく観察すると、主人公は母や軍隊での上官など信頼できる人の教えに従順で、自らの強い意志を持っていないように映る。流されるままに生きて本人が求めていない大成功を納めてしまう。強い意志を感ずるのは、ジェニーへの想いだけだ。
興味深いのは主人公が愛するジェニーや軍隊での上官ダン中尉の描き方だ。私は主人公のガンプよりもこの二人の生き方に関心をもった。主人公は神の恩寵の元にあるが、二人は私と同じでどこにでもいる普通の人間だ。ジェニーは幼い頃に母親と死別し、アルコール中毒の父親に育てられた。もしかすると性的虐待を受けていたかもしれない。生家を恨んでいるからだ。ガンプの愛情を分かっていながら、素直に受け入れられない。主人公と肉体関係を持つと唐突に家出してしまう。最終的には主人公と結婚するが、若死にする。彼女の彷徨を辿る映画でもある。何故ガンプの元を去り、また戻ってくるのかがよく理解できない。
ダン中尉は軍人の家系に生まれ、名誉の戦死を遂げることが彼の望みだった。ところが、ガンプの助けにより命を救われたが、両足切断の運命を背負うことになった。その運命を呪い、自暴自棄なったりする。ガンプと一緒に働くことで運命を受け入れ、克服もする。エビ漁で成功したことがその理由だろうか。そうではなく、主人公から感化されて運命を克服できたと思うのだが、そこがよく描かれていないので理解できない。
もし、この二点が描かれていたならば、もう0.5点加点しても良かった。多分、心から感動してしまうだろう。歴史上の人物や史実に主人公を絡ませる加工・編集や当時流行した音楽を使って娯楽映画としても秀作である。
ジョンソン大統領のエピソードは笑わせた。この大統領は大変朗らかな人で、巨根が自慢でパンツをすぐ下ろしたがるという噂を聞いた事がある。
キング牧師を登場させなかったのは残念だ。プレスリーを「キング」と主人公に発言させている。
ある評者があれはキング牧師と被せているとの解釈だが、やはり映像で登場させたかった。
原作になかったかもしれない。だけど、脚色してでも入れるべきだと私は思う。
いなかびとさん
町山さんのYouTubeみました。
疑問点がクリアになった気分です。
だからジェニーをあんなに悪女のように描いてたのか、とか、主人公を知能指数の低い従順で良い人として描いてたのか、とか、アラバマなのに人種差別問題が描かれてない理由とか、スッキリしました。
共和党のプロパガンダとの解説も、なるほど、でした。
大人の童話、なるほどです。
たなかなかなかさん、ご返事ありがとうございます。
町山智浩さんの映画評は、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって感じでボロくそですね。
この映画で私は人種差別を全く感じませんでした。ガンプは黒人の戦友BBを必死で助けようとしますし、その母には大金をあげています。ガンプの結婚式に、ダン中尉はアジア系の婚約者を連れて参列します。少し小太りで美人じゃなかったのが素敵でした。両足切断の苦悩を克服した選択です。つまり、見かけじゃないよ。こころだよと言っているかのようです。
いなかびとさん、コメントありがとうございます😊
町山智浩さんのレビューは中々に強烈でしたよね😅
良い映画だとは思うのですが、あと一歩という気もします…。