「作品に込められている不純物で消化不良気味」フェリーニのローマ あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
作品に込められている不純物で消化不良気味
1972年イタリア映画。120分。今年35本目の作品。「道」や「甘い生活」など独特の映像美が光るフェリーニ監督の作品。個人的には本作がフェリーニ監督の初のカラー作品。
内容は;
1930年代から70年代のローマの街の風景や群像劇を描くことで、その荒廃ぶりを描いている。
本作は、ドキュメンタリーとフィクションの中間にあるような作品でしょうか。フィクションと呼ぶには筋書きがなく、さらにドキュメンタリーと呼ぶには設定が架空過ぎる。巨匠だからこそ作れるようなつかみ所のない(それでいて高尚な)作品です。
フェリーニと言えば、やはり独特の映像感覚。個人的にはまさしく天使が宿っているような映像美。物語はどん底なのになぜか気持ちが落ちないあの映像美。
本作の最初の一時間はその映像美が素晴らしく、内容が今ひとつ掴めなくてもついて行けましたし、心は恍惚としました。それでも、それまで見てきたフェリーニ作品とは何かが違う。神聖なるものが荒廃しているのです。
それに気づいたのは後の一時間。フェリーニ作品ではお馴染みの動物や子供などがまったく出てこなくなります(そして、これが故意であることは観終わってから分りました)。
後半は宗教的なカルト色がかなり強く、正直しんどくなりました。本作はローマという街に対する教養が必要とされる作品だと思いました。
イタリアの国宝・フェリーニ監督は、ローマの偉大なる文化が風化しようとしている様を描こうとしていたのだと思いますが、ほんと、後半はまったくついていけなかったです。
でも、やはりあの映像はすごい。
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