「アホとシリアスの狭間で」フェリーニのアマルコルド kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
アホとシリアスの狭間で
フェリーニ初体験。初体験がこんな熟女ムービーで良いのか、と思いましたが、それもまた運命ということで。
本作はじつにこってりした味付けの、脂ギトギト、旨味100%の映画でした。
本作にはストーリーがほぼありません。フェリーニを投影したと思われる少年目線で、彼が住む街の一年を徒然と描いているだけです。
シーンの積み重ねだけで描かれた作品でしたが、とにかくどのシーンも濃厚かつ基本バカなので飽きることはなかったですね。
私は上品で高尚な作品が好みなのですが、それは私のコンプレックスの反映で、結局肌に合うのは本作のようなエロ下品なしょーもねぇイキフンのガーエーなんですよ。思想性の欠けたソウル・フラワー・ユニオンのようなノリを持つ本作の猥雑な魅力にはあがなえませんでした。いやー、超面白かった!
なんだかんだと、本作は生命力にあふれ、人間愛・人間賛歌に満ちた豊かな映画だと思います。
本作はなにしろ下品ギャクのキレが最高です。
主人公のエロガキはとにかく熟女のパイオツとケツが大好きで、やたらとケツのどアップが出てきます。なんというが、ド正直でいいですね。
もっともウケたのは、豆売りのエロおじさんのエピソード。アラブの金持ちが囲っている女たちに逆ナン(?)されて、女たちの部屋に忍び込むと、女たちがするするする〜っと脱ぎ出して全員でエロいダンスを踊る!そしてエロおじさんはこの夜、28人の女たちと関係した…って、アホか!と突っ込む気力も起きない最高さ加減です。またエロおじさんがエロしか考えてなさそうな面構えなんですよね、しかしこのエピソードはなんなんだ!
精神病の叔父さんが木に登って「女が欲しい〜!」と魂の叫びを上げるシーンも爆笑!また、叔父さんの病気っぷりがリアルなんです。少しずつ調子を崩して家族と話が完全にかみ合わなくなるところとか、生々しく、だからこそブラックなギャクになっているようにも感じました。看護師がやってくるオチも、絵面が面白くて絶妙でした。
一方で、ただのエロバカ映画ではないのも、本作の魅力です。
基本的に本作は客観的でクールな視点で描かれているな、と思いました。エロガキが父親に暴力を振るわれるシーンも距離があり、ギャクとして描写されているように思います。
一方で、突然トーンが変わる霧のシーンや、孔雀以降の展開は、死が生の隣にあることを突きつけてきます。ここには恐怖や悲しみといった、当事者としての痛みが描かれていたと感じました。
この、エロ-シリアス、観察者-当事者といった振り幅の大きさが、本作のスケールをデカくしていると考えます。
そして、その振り幅の大きさこそが、清濁合わせ飲んだものが人間の営みなんだぜ、そうやって季節は巡って行くんだぞゴルァ!と、フェリーニ師匠は語っているのだと思います。