「素晴らしい! 一級の映像美に圧倒される311分」ファニーとアレクサンデル Jettさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい! 一級の映像美に圧倒される311分
高校生だった1985年の初公開当時、家の近くでは上映館がなく観られず、その後も縁がなく観ていませんでしたが、ずっと気になっており、何十年も経った今日、ようやく観ることができました
本作は、黒澤明さん、フェデリコ・フェリーニさんと並び”20世紀最大の巨匠”と崇められるイングマール・ベルイマン監督の晩年の代表作
劇中に登場する主人公アレクサンデルはベルイマンさんの幼少期、2番目の厳格な父親で主教のエドヴァルドは実父といった様に監督の自叙伝的作品とのこと
ストーリーは1900年初頭、監督の故郷スウェーデンのウプサラという地方都市で劇場を営むエクダール家の人間模様をアレクサンデル少年の目を通して描く群像劇
全編通してベルイマンさんがいかに幼少期を危うく脆い精神状態で過ごしたかがうかがえます
作品としては超上級編で鑑賞にはかなりの覚悟が要ると思います
5時間超えの長尺もさることながら、かなり哲学的な内容を含んでいますので下手すると”ワケわかりません・・・結局なにが言いたかったの?”で終わりかねませんが、それを帳消しにするほど映像が素晴らしい
絵画を観るような美しいフレーミングと特にエクダール家の屋敷内は絢爛豪華で圧巻の映像美、数々の映像作家に影響を与えたイングマール・ベルイマン監督の真髄を垣間見ることができますので、話が難解でも一見の価値はあります
その裏付けとして本作は、1984年の第56回アカデミー賞授賞式にて
アカデミー美術賞(Academy Award for Best Production Design)
アカデミー撮影賞(Academy Award for Best Cinematography)
アカデミー衣裳デザイン賞(Academy Award for Costume Design)
を受賞しています
家族・親族で結束し仲良く、難しいことは考えず楽しく生きていく事が人間にとって一番大事な事
というメッセージを私は受け取りました
現代では到底撮られないであろうスケールで描く、惚れ惚れするほどの一級の映像美に圧倒されっぱなしでした