「戦争のロマンなき世界、トップガンへ」ファイナル・カウントダウン よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
戦争のロマンなき世界、トップガンへ
この作品のわずか6年後に「トップ・ガン」が製作されている。米海軍の原子力空母での撮影が両作品の見どころとして共通している。そのいくつかの具体的なショットは、この作品のものがほとんどそのまま、後年の作品に受け継がれている。
例えば、上昇する艦載機のエレベータを水平に捉えたショット。艦載機と床の影が甲板に昇りつめると、ぽっかりと空いた舷側に水平線が現れる。
甲板の作業員のジェスチャー。カタパルトで発信するトムキャット。緊急着艦する機体を受け止めるネット。
男の子が喜びそうなカットの連続で、両作品とも多くの主に男性の観客を、スクリーンにくぎ付けにした。
この二つの作品の異なる点は、「リアリティ」の点であろう。「ファイナル・カウントダウン」はタイムスリップという超常現象が物語を生起させるが、「トップ・ガン」では友人の死、教官との恋という、現実に起きうる出来事が語られる。
しかし、タイムスリップは荒唐無稽で非現実的だが、美人教官とのラブストーリーは現実味があるということにはならない。どちらも、現実に起きる可能性は天文学的に低く、両方とも男どもの夢想に他ならないのである。
1980年代という、東西冷戦の構造が固まった時代には戦争というロマンが説得力を失っていった。航空母艦やジェット戦闘機は、まさに戦争のための舞台設定である。その目的である戦争に男のロマンが失われたとすれば、これまでそれを求めてきた者たちに映画はどんなロマンを与えることができるのか。
この二つの作品が、まさにそのことへの答えを示している。
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