「恋愛に臆病な大学生の苦い初恋物語も、狭い特殊性に終わる凡庸さ」ファースト・ラブ(1978) Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛に臆病な大学生の苦い初恋物語も、狭い特殊性に終わる凡庸さ
真面目な大学生エルジンを主人公にした初恋物語に複雑な男女関係を入れて、性的表現にも深く挑んだ青春映画。しかし、監督の視野の狭さが映像空間を限定しているため映画の良さも限られる。感情に赴くままの性の欲望に正直なアメリカ人の価値観は窺えるが、そこに改めて初恋にある人生の意義は見出せない。つまり、苦い初恋の経験を通して人間的に成長する物語のバックグラウンドが弱い。初恋相手のキャロラインが妻子ある男性との関係を清算する展開があっても、エルジンの物語を語るドラマを盛り上げないのだ。常に受け身のエルジンの行動に説得力がなく、戻って来たキャロラインを受け入れ交際を続けるのにリアリティはあるが、それ以上の情感の発露が表現されていない。また、舞台となるキャンパス描写も表面的に終わる。同じ制作者の「卒業」と比べることは、ナンセンス。どうせなら、キャロラインを主人公にすべき内容であろう。
恋愛感情の細やかな表現より、刺激的な性表現に偏った映画の日常生活描写の未熟さが指摘される凡作。ただし、主演女優のスーザン・デイの演技は魅力的で、これだけは注目した。ウィリアム・カットは平均的なアメリカ青年を演じるも、役柄以上の表現力は感じない。結局何を言いたかった映画なのか、個人的に響くものがなく観終える。
1978年 8月26日 郡山スカラ座
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