「でとろいと刑事、ビバリーヒルズへ行く」ビバリーヒルズ・コップ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
でとろいと刑事、ビバリーヒルズへ行く
30年ぶりとなる最新作配信前に、シリーズ再見。
こうやってしかと見るのはメッチャ久し振り。
80年代は世界中で“刑事アクション映画”が大活躍。ハリウッドで(『ダイ・ハード』『リーサル・ウェポン』etc)、香港で(『ポリス・ストーリー』etc)、日本でも(『あぶない刑事』etc)。
人気俳優やアクションスターもこぞって刑事に“転職”。
各々の魅力や持ち味あるが、シリアスやクールさが多かった刑事アクションにコメディ要素を取り入れ、あの軽快なテーマ曲と共に、新たな名物刑事がまた一人表彰。
当初はスタローン主演でコメディ無しの予定だったらしいが、このキャスティング、この作風に変わって大正解。スタローンだったら一回きりの捜査で終わっていただろう。
『48時間』で映画デビュー。この時は刑事とバディを組む囚人だったが、今度は晴れて刑事に。デトロイトの刑事、アクセル・フォーリー!
エディ・マーフィの持ち前の魅力と個性が存分に発揮され、スターダムへのし上げた。
最大の武器は射撃や推理力ではなく、マシンガン・トーク。
ビバリーヒルズの刑事たちとも敵とも高級ホテルに泊まる際も、口八丁手八丁で。アドリブも随分あるんだろうなぁ。
命令無視、無鉄砲な捜査は毎度の事。管轄内でも問題児なのに、管轄外でそんな事やられちゃあチョー迷惑。
確かに迷惑問題児だけど、こういう奴に限って優秀。それは上司も認める所。
勘の良さ、機転もさることながら、度胸や正義感は人一倍。
こういう刑事に目を付けられたら、悪党ども、もう逃げられねぇぞ!
幼馴染みが何者かに殺された。
問題行動と私情入り交じりで担当外されるも、“休暇”を取って彼が働いていたビバリーヒルズへ。
地元刑事と衝突しながらも、幼馴染みを殺させた主犯、有名画商で街の名士でありながら裏で麻薬などの密輸をする犯行を突き止める…。
謎解きや入り組んだってほどじゃない。シンプルながら、コメディやアクションだけに走らず、なかなか本格的な刑事捜査ストーリーになっている。
エディのアクセル全開だけじゃなく、周りも好サポート。ビリー&タガート、堅物上司、敵ボスの存在感。
アクション・シーンはそんなに多くないが、開幕のカーチェイスやクライマックスの銃撃戦など見せ場は抑える。
寡作ながらマーティン・ブレスト監督の手堅いエンタメ演出。
ウィットに富み、テンポ良し、キャラ立ちや面白味ある内容が評価されて、このジャンルでアカデミー脚本賞ノミネートはお見事。
エンターテイメント第一でありつつ、メッセージもそれとなく忍ばせる。
アクセルは黒人刑事。あからさまな人種差別描写はないが、置かれた立場や周りの環境などを、軽妙にマシンガン・トークで笑い飛ばす。
実は非常に巧みな作りが、アカデミー脚本賞ノミネートの実績だ。
ここはビバリーヒルズ。デトロイトじゃない。
それでもアクセル流捜査を展開。
ただの俺様一匹狼、手柄は一人占めじゃなく、必ず協力を依頼。
相手刑事に不都合があると、嘘を付いてまで手柄を持たせようとする。
アクセルにとっちゃあ手柄や警察内部のしがらみなど興味無いんだろうね。事件解決最優先。
そんな彼に感化されて、堅物だったタガートや警部補も…。
リアル(現実世界)だったら刑事の嘘は問題だけど、こういう嘘だったら…。映画ではあるけど、絆や義理人情を感じる。
何よりエディのあの飛びっきりのスマイルを見せられちゃあ憎めない。
80年代、何をやっても無双状態のエディを物語る。