日の名残りのレビュー・感想・評価
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仕事一筋の人にこそ響く映画
ノーベル賞作家カズオ・イシグロの
おそらく1番有名な原作の映画化。
もう随分以前の作品で、名前は良く知ってましたが、
午前十時の映画祭で初めてじっくり観ました。
初老の執事に旧知の女性から届いた手紙がきっかけで
その女性と一緒に働いていた日々の回想へと入って行く、
と言う感じで、ある程度の年齢の人の方が
心に響きそうな内容です。
自分の使える主人の思想や振る舞いに、
人としては納得出来ないモノを感じながらも、
執事の仕事に誇りを持つ主人公は
自分の葛藤を隠して黙々と仕事に殉じて行く。
あまりにその思いに忠実であるため、
自分の恋心さえ、悟られまいと押し隠す。
舞台はイギリスの貴族社会ではあるけど、
主人公の振る舞いは、何となく、
企業の不正を知りつつも、仕事への誇りのあまり
企業の闇に飲み込まれてゆく現在のサラリーマンにも
通じるような理不尽さが結構切ない。
で、月に8回程映画館に通う中途半端な映画好きとしては
主人公を演じるアンソニー・ホプキンスの
ストイックな演技が、流石に見ものです。
無表情の表情。
そんな合間に僅かに見せる動揺シーンが印象的。
密かに心を寄せている女性エマ・トンプソンが、
ホプキンスの読んでいた小説を
その手から奪い取ろうとした時、
絶対に見られたくなかったホプキンスの表情が、
見ようによっては恐ろしげで、
もしやドクター・レクターに豹変しやしないか(笑)
なんだ別の意味でドキドキしてしまった。
冒頭の見もの、
華やかなりし大英帝国貴族の贅沢な遊び「狐狩り」の
勇壮なシーンは、今の時代ではもしかしたら
もう撮影出来ないかも??
それから、
第二次世界大戦で一人勝ちしたアメリカの
富豪の役を故クリストファー・リーブが演じてます。
あのスーパーマンのクリストファー・リーブ!
いかにもイギリスとは
違う新興勢力の勝ち誇った王者感がよく出てました(笑)
@もう一度観るなら?
「中年以上の方には心にしみるかも〜〜」
原作の良さ
イギリスの古めかしくて気品のある屋敷とその中で立ち回る使用人達。小説に登場する情景の再現度はみごとでした。が、最も印象的なラストシーンを改変してはダメでしょう…。それと映画ではスティーブンスのモノローグが一切ないので、厳しい顔をしていながらクスリと笑えるチャーミングな内面を持っていることが伝わりにくかったの残念でした。
極上のスープのようなアンソニー・ホプキンスの演技に脱帽
個人評価:4.0
カズオ・イシグロの原作を映画化。
アンソニー・ホプキンスの正確無比な執事っぷりにうっとりする。まるで極上のスープを飲むような感覚。それだけでも見応えは十二分ある。
またノーベル文学賞を取った作家の作品らしい気品が漂うストーリーも心地良い。
主人公であるスティーブンスのぶれない性格や人生観が見る者に彼への愛情を感じさせる。
アンソニー・ホプキンス以外、この主人公は考えられない見事な配役だと感じる。
執事たちの沈黙
上流階級ものは数多くあるイギリス映画だが、下で働く者たちをメインにした映画も珍しい。
各国のVIP(アメリカ代表がクリストファー・リーヴ氏)が会合に参加するほどの屋敷ダーリントン邸。執事長のスティーヴンスは父が倒れても働きつくす。会合は敗戦国ドイツの扱いを平和的に解決するなどといった内容だったが、その最中に彼の父は息をひきとってしまう。
ナチス・ドイツが力をつけてきた折、主人からはユダヤ人のメイド二人を解雇するように命ぜられる。しかし執事には主人の主義・主張など関係がない。終戦後に尋問されても沈黙を押し通すホプキンスの渋さ。こりゃ『羊たちの沈黙』ならぬ「執事たちの沈黙」だ。女中頭となったケンテンとも恋愛感情がわいてきそうなのに、自分を押し殺して読書に耽る。放っておくから結婚しちまった。
時代は3つくらいに分かれているけど、繋ぎ目がないので、台詞の字幕をじっくり見ていないとわからなくなってくる。しかも実務的な会話ばかりなので非常につまらない。せめて戦争の映像が少しでもあれば・・・
執事の威厳、忠誠に感動!
原作を読んで映像も観たくなっので鑑賞。
主人に忠誠を誓う彼の姿が印象的。
こんなにも主人に忠実な人はなかなかいないでしょう…。
父親の代からずっと寄り添い続けることで、主人から信頼され愛されてきた彼。
大事なパーティーがあれば、たとえ父親が亡くなっても、業務を遂行し涙を日なすことなくやり通します。
まさに仕事に対するプライドの塊。
この忠誠は、ご主人様が人として威厳のあり尊敬に値する存在だからこそ。
彼の生き様はまさに執事の鏡。
年月を経てご主人がいなくなっても、屋敷に留まり続ける彼。
この土地に生きると決めた彼の想いが、何年も何年も生きて続けているのかもしれませんね。
愛や恋をもかなぐり捨てて、1人孤独に生きる彼のその決意と覚悟に感動しました。
イギリスの貴族の名残りか?
ちょっと昔?の時代のイギリスを満喫できる作品。重厚で気品ある作品。イギリスで元貴族の館を校舎兼寄宿舎とした専門学校に通った経験があるが、その時の気の滅入るような冷たさ、古い?匂い、閉塞感が甦る思いだった。執事、秘書の誇り、ブリティッシュイングリッシュ、議論の応酬、全てがイギリスだ!でも、本では最後に何か気のきいたセリフ、アメリカンジョークのようなのを、スティーブンソンが言うか言われるかしたような気がするが、映画ではそんなのはなかったな。
古き良きイギリスの全てが詰まった、とってもイギリス的な映画
イギリス好きとして本当にうっとりしてしまう映像ばかりで、映像も精神もことばも衣装も文化も、何もかもがイギリスにあふれている、そんな映画。
戦時中のイギリス貴族に使える執事が主人公ですが、そこから見える当時の景色がとても面白い。貴族と執事という圧倒的な格差。イギリス・フランスが新興国アメリカに対して持つ想い、この描写は中々イギリス的だった。屋敷でふるまわれる紅茶とブランデーと葉巻、それに対する町のパブのビール。貴族が乗り回すクラシックカー(これがまたカッコいい!!)と、ミス・ケントンの自転車。マナーハウスの美しさも素晴らしいけれど、個人的には貴族たちの衣装に終始釘付けでした。ツイードのスリーピースのスーツ、蝶ネクタイの燕尾服、どれもディテールが凝っていて素敵です。
あとは、字幕だとわからなくなってしまいますが、おそらくとんでもなく回りくどい英語を話していたのも、上流階級だなぁとうっとり聞いていました。
主人に尽くす執事と共に働く女性のプラトニックな恋が出てきますが、メインは執事の執念的な生き方であって、こーゆう生き方が存在する点で、日本とイギリスは似ているところがある気がします。多分、アメリカ人には作れない物語。ところどころ、イギリスっぽい皮肉的な表現やブラックジョークがあったのもまた良かった。
とはいえ、最終的に屋敷はアメリカ人の手に渡るわけですが… 彼はどういう意図でこの屋敷を買ったのか。そういえば、最初のオークションの意味がちょっとわからなかった。。。
主人公の執事はあのハンニバルことアンソニー・ホプキンスが演じて素晴らしいのですが、見どころは美しすぎる若き日のヒュー・グラントでしょうか。本当にかっこいいです。
人に仕えるという仕事
原作は、日系イギリス人の作家カズオ・イシグロさん。それはそれは美しい英国の物語、人物描写・厳格・伝統・造形美…様々な視点から深くて静かな感動を呼び起こす作品です。見終わったあと、「日の名残り」というタイトル名がいかにベストマッチしたものであるか感嘆のため息がでるようです。アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン他、名優人達が素晴らしい! 特典映像(特にカットシーン)もすべて観る事をおすすめします。
時代に取り残されても今更生き方を変えられない
総合:70点
ストーリー: 65
キャスト: 80
演出: 75
ビジュアル: 75
音楽: 80
原作を読んだことがないが、NHKの英語教育番組で昔に日系英国人であるカズオ・イシグロのこの本のことを取り上げていたので存在は知っていた。執事を主人公にした珍しい作品で、英国の伝統の尊厳を感じさせる。本作も含めて英国文学を基にした時代劇(というほど古くもないが)は格調と質が高い物が多い。
自分の仕事に誇りを持つが、仕事一筋でお堅いがゆえに本当の自分を出すことが出来ない男が何とももどかしく、彼自身の心の中にも後悔や喪失感もあるだろう。気になる女性が精一杯の告白をしたり泣いたりしていても、仕事に結びつけた振る舞いしかすることが出来ない。それはまるで真面目で純情な中学生の生徒会長のような行動である。もうこのような貴族の下で自分を押し殺す職業の時代は、窮屈な屋敷に迷い込んだ後で自由に空に向かって飛び立つ鳩のように過ぎ去っていくのかもしれない。屋敷からは英国貴族が去り、貴族とは縁のない平等の米国から新たに主人がやって来る。それでも今更過去にも戻れずそれ以外の生き方を知らず、それを変えることも出来ないやりきれなさが残る。
でも時代に取り残された男の、たったそれだけの物語でもあった。演技・映像・音楽は良かったし文学的な美しさや儚さはあるのだけれど、物語自体にすごく面白い物語かといえばそうでもなった。自分が貴族社会に生きていないから、思い入れが少ないのが原因かもしれない。
自らを人道主義者と思い込んで高潔な理想を掲げ、自分の信念に基づいて行動し、それがかえって世界を破滅に導いてしまうダーリントン卿。これはただの映画だし主題とは関係ないのだが、現代の日本もそうだがどの時代にもこんなおめでたい人々がいたのだなと思った。
執事という生き方
先に原作を読み、DVDで見た。
原作には、田園風景などイギリスの美しい景色が描かれていて楽しみにしていたが、
映画ではほとんど省かれていて残念だった。
ジェームズ・アイボリー監督の作品は「眺めのいい部屋」と「モーリス」しか見てなかったが、
豪華な額縁に入った具象絵画のような重厚な作品の内側に、自由な感性と奔放な情熱が感じられて
とても良かったので、期待して見た。
導入部は、ワクワクしていたが、執事長の矜持を醒めた眼で見るように感じられる部分があり、
原作とは全く異なる印象だった。
原作は執事長の心情に寄り添って書かれているが、映画になる事で、彼が見ないようにしてきた
彼を取り巻く世界の無情な変化と、彼の滑稽なまでの執事としての生き方へのこだわりが、
見る側にはっきりと伝わる事になったのだろう。
アンソニー・ホプキンスが上手いのは言うまでもないが、エマ・トンプソンの演技が素晴らしく、
彼女を知っただけで、見る価値はあった。
どちらも劇場で見る事はできなかったが、同じカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」は、
原作者が製作に参加しているので、原作の雰囲気を大事にしているだろうと楽しみにしている。
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