「息苦しい」陽のあたる場所 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
息苦しい
総合:75点 ( ストーリー:80点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )
能力がありながらも不幸な身の上にあり、劣等感を持ちつつ野心を隠しながら能力を活かして上を目指す人の話は好きである。それは能力に裏付けられ頑張って努力をしてより高い場所に行こうと自ら発奮している姿に共感するから。
でもこの手の野心家の話は往々にして簡単にいかないものだ。しかしそれが女性関係のもつれが招く愛の物語ゆえなのだとは思わなかった。ジョージ・アリス・アンジェラの3人の愛が絡みあいもつれて身動きできなくなるのが、観ていてとても息苦しかった。そしてそこからさらに犯罪の話へと展開される。ジョージは多少の才能と能力はあるものの、教育もなく劣等感もあり恋愛禁止を無視するし犯罪計画も杜撰で軽はずみな部分も目につき、感情を制御できず苦悩し続ける人間臭さと凡庸さもある。
アリスは貧乏の家庭の出身だが、小さいけれど幸せな家庭を作るには良い女性だったと思う。途中でジョージを脅迫もするが、それでもささやかな生活を夢見てジョージの愛を取り戻せたらと願う一途な姿は可愛らしいし同情する。
アンジェラは若さと美しさを輝かせながらいかにも上流階級らしい立ち振る舞いだが、両親が許さないなら全てを捨てて愛のため駆け落ちする覚悟もあれば、世間の目を気にもせず刑務所にジョージに会う決断力もある。今まで観たエリザベス・テイラーの役柄の中で一番気に入った。
ジョージにしてもアリスに対する態度は褒められたものではないが、アリスを嫌いだったわけではないだろうし、彼は全てを捨ててアンジェラと駆け落ちすることすら望んだのだから、上流階級より金よりも何よりも本当にアンジェラのことが好きだったのがわかる。またそれだからこそアリスがいなくなればと思う過程がしっかりと伝わってきた。
物語は湖・無線受信機からの暑さで人が死ぬ報道等の伏線があまりに露骨すぎて、先が読めてしまうのは気になった。殺人の場面がなくてはっきりさせないのはどうかなと思ったが、これも結果的にはその後への伏線だったが、ちょっと曖昧すぎると思った。殺人をしなかったが、助けずに見捨てたのが結局殺人というなら、それをはっきりと見せても良かったのではないか。
昔の映画なために規制も多いようで、妊娠に至る性的描写と死の場面のあまりに直接的な演出がないのは迫力不足。ただしジョージ・アリスの2人の感情のずれが重く伝わってくる演出は良かった。