「素人スパイの奮闘劇」引き裂かれたカーテン kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
素人スパイの奮闘劇
Blu-rayで観賞。
東西冷戦時代を背景としたスパイサスペンス。
ヒッチコックは本作を'66年に発表した後、'76年の引退作『ファミリー・プロット』までに3作品しか発表していない。
つまり、本作は晩年期の作品と言える。
映画の序盤では主人公ポール・ニューマンの行動の意図が隠されていて、恋人のジュディ・アンドリュースと我々観客が彼に疑念を抱くように仕掛けられている。
中盤、ニューマンの目的が観客には明かされ、今度はアンドリュースだけが事情を知らない状態となる。ここから観客はニューマンと緊迫感を共有する。
そして、アンドリュースに事実が伝えられ、作戦遂行と脱出のスリルがテンポよく展開される。
考えられた物語構成。
作戦の目的である敵方の物理学者が解いた公式は、いわゆるマクガフィン。
この公式を聞き出す駆引きのサスペンス、そして脱出道程の危機また危機に楽しませるアイディアが満載だ。
晩年の作品らしく、手練れの演出が随所にある。
ニューマンを俯瞰で追っていたカメラの位置がスーっと下がると、監視役の男が柱の陰に隠れているというシーンのワンカット。
ニューマンがアンドリュースに真実を告げる様子をロングショットで見せた後、アンドリュースのアップで彼女が理解したことを示すシーンに台詞はない。
特筆すべきは、ニューマンが監視役の男を殺害するシーン。
素人が人を殺すことの難しさを表現しているのだが、そこに滑稽さを加えているのがヒッチコック流だ。
絶命の瞬間を両手の動きで表していているのも、実に面白い。
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