劇場公開日 1966年10月22日

「何ら失敗作ではない、もっと評価されるべきだ」引き裂かれたカーテン あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5何ら失敗作ではない、もっと評価されるべきだ

2019年3月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

面白い
所々突っ込み処はあれど全体としては大変に良くできたスパイ映画だ
何ら失敗作ではない、もっと評価されるべきだ
型にはまったヒッチコック映画を期待して観ればそうではない内容だから正当な評価をされていないと思える

ジュリー・アンドリュースとポール・ニューマンの主演は映画会社が勝手に決めたものだという
ヒッチコック50作記念、ユニバーサル映画50周年記念作品の肝入りだったとのこと
ヒッチコックもこの配役ではやりにくだろう
だいたいヒッチコックの好みではない俳優だ
演じている二人も乗っていないのが伝わる
だいたい歌も歌うシーンも無いのになぜジュリー・アンドリュースを使わねばならないのか?
なぜ彼女なのか?
メリー・ポピンズ、サウンド・オブ・ミュージックで売れたからだけじゃないのか
ヒッチコックの憤慨ぶりが目に浮かぶ
ポール・ニューマンもヒッチコックの意図などお構い無しに彼なりの演技を主張ばかりしていたに違いない

ヒロインは最低ブロンド美人にすべきだった
ジュリー・アンドリュースは小学校の先生か家庭教師には見えても世界的な数学教授にはとても見えない
ポール・ニューマン扮する主人公ももっと科学者に見える役者があったろう

しかし、脚本は良く練られており、ヒッチコック流のユーモアもウイットも効かせてある
終盤で大きな役割のある年増のバレリーナは、始めの方の東ベルリン行きの飛行機でヒロインの隣に座らせておりマイケルの顔を覚え反感を持たせる伏線をはり、タラップを降りるシーンはラストシーン間際で今度は船のタラップで再現して笑いをとる
実にヒッチコックらしい

脚本は練り過ぎて数人の手にまたがってしまい、その為にクレジットに揉めてしまったに過ぎない

音楽は本作製作中にバーナード・ハーマンと対立し途中で音楽をジョン・アディソンに差し替えしている
どこを巡って対立したのか?
農場で東ドイツの情報部員との殺し合うシーンが無音で続く印象深いシーンがある
そこに音楽をつけるか付けないか
その対立だったのでは無いだろうか?
無い方が緊迫感は断然優れていると思う

カーテンとほもちろん鉄のカーテンのこと
ベルリンの壁の崩壊と共に消え去った

では21世紀の現代では鉄のカーテンは昔の話だろうか
そうではあるまい
より巧妙なカーテンが引かれている
チベット、ウイグルの実情はどうか?
中国の国民は自由に国外に移動できるようで、情報は金盾というカーテンで遮断され、彼らの言論行動は厳しく監視されている

この物語は昔話ではないのだ

あき240