劇場公開日 2016年4月9日

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「正義と至高が接吻する。ハレルヤ!」バベットの晩餐会 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0正義と至高が接吻する。ハレルヤ!

2024年1月6日
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鑑賞方法:映画館

封切り当時に映画館で観たがその後長らくTV放映でも配信でも最後まで通して観ることが出来なかった。デンマークの寒村が舞台だし室内シーンが多いので小さい画面ではどうも暗くごちゃごちゃして見づらいことがあって。映画館で観るべき映画の一つ。
バベットは1871年にパリから村にやって来る。パリ・コミューンのあった年でナポレオン3世が失脚している。「皇后と共に追われた」っていうセリフがあるから有名なウーディニ皇后に可愛がられた料理人だったのでしょう。そこから14年経っているのだから1885年くらいの設定。ちなみに昨年公開の「ポトフ」もこれぐらいの時期設定になっている。
村はユトランドにある。コペンハーゲンの北西、北海に突き出した半島の村。ここに住む年配の姉妹が父から引き継いだルター派のコミューンを主宰している。
姉妹も信者たちも敬虔な宗教者で質素で禁欲的な生活をおくっている。バベットが特に抵抗なく受け入れられたのはデンマーク王国という国が比較的、開明的だったからだと思う。
ただこの両者のバランスはバベットが宝くじ当選金を原資にして晩餐会を催すことによって崩れる。映画の前半部分は事実関係の説明と背景の紹介に割かれているが、後半部分は大げさにいうと文明の衝突にあたる晩餐会が描かれる。
久しぶりに観て、記憶よりも晩餐会のメニューが簡素であるとは感じた。コストがかかるのはウミガメだの南洋の果物だの珍奇な食材をはるばる輸送したから。パリ仕込の腕は普通の食材を使ってでも表現できたのではないかとは思ったけど。
いずれにせよバベットの料理は出席者のこころを溶かし受け入れられるに至る。
制作者の言いたかったことは表題に記した将軍のセリフに凝縮されている。おそらくここでの正義は宗教を、至高は芸術を指している。
宗教にしても料理にしても他の芸術にしても全て人間が生み出し、守り、積み重ね、発展させてきたもの。全て等価でありお互いに尊重されるべき。それがヒューマニズムということではないかと感じた。ハレルヤ!

あんちゃん
トミーさんのコメント
2024年1月19日

人間が生み出したものは、人間を癒し救う為に生まれたと信じたいです。

トミー