劇場公開日 2016年4月9日

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「永遠の瞬間である、ある晩餐会」バベットの晩餐会 ターコイズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0永遠の瞬間である、ある晩餐会

2022年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

規律を守り質素に暮らしてきた老姉妹。ひょんな縁でフランス人の元シェフの女性を家政婦として雇うことになり、彼女はある日、自分持ちで晩餐会を開きフランス料理の腕を振るおうとする。
慎ましく、控えめに暮らす敬虔な生と、贅を尽くした世俗的な暮らしや華やかな場所を生きる生が対比されているように感じる。そしてそれでも行き着くところは、大差なく、華やかな場所でも虚しさと孤独からは逃れられない。
食を堪能し美食に慣れている人も、美食に慄き罪の意識から口をつぐもうとする村人も、ワインの、そして料理の悦楽から少しずつ心をほぐされていく、平等に。
この映画から強く印象を受けたのは、永遠の瞬間がそれぞれにあるのだということ。幸福の絶頂がけして持続的なものでなくとも、人を満たすのに十分な瞬間を味わっているのなら、それは永遠になりうる。バベットの晩餐会は姉妹や村人、将軍、そしてバベット自身にとっても永遠の瞬間であり、それとは別に将軍にもオペラ歌手にも姉妹にもそれぞれの永遠も瞬間があったはず。
人は想い出を抱いて死ぬ、近頃よくこの言葉を思い出す。

ターコイズ
femme fatalさんのコメント
2024年1月19日

素敵なレビューありがとうございます。はてさて私は死ぬ時何を思うだろう?とつらつら考えてしまいました。

femme fatal