「淡々としながら共感出来る名作」バッファロー'66 かずくんさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々としながら共感出来る名作
初めて知った映画になるが、
ポスターのギャロさんとリッチさんに惹かれて鑑賞。
いやぁ…、
こんなところで名作が見れるとは思ってもみなかった。
何も叩き込まなかったからこそ、
いきなりの口の悪いビリーに驚かされた。
結構彼言いますねぇ…。
序盤からトイレも自由に行けない街に降り立ち、
軽い暴力に横暴な面がゴリゴリ。
挙げ句の果て借金した女性を拉致した上に、
偽装夫婦を演じさせるまでに…。
「このアンちゃん相当なやっちゃだなぁ…」と思わされたし、
家族との関係も非常に…。
でもみんな根は優しいし、
こだわりがあるんだなーと思ってみていた。
んでここらへんで我らが天使のレイラさんですよ。
彼女の観察眼が完璧すぎる…。
普通なら逃げ出したりしてもいい展開を、
きちんと言う事聞いてビリーをよく見ている。
孤独で本当は傲慢でも何でもなく、
不器用に不器用を重ねたどこにでも居る一般人。
不思議と最初の衝撃を忘れ、
デニーズで嗚咽するシーンで砕かれた。
いやぁ…生きられないよなぁ。
うん。
モーテルで彼女に困りながらも、
素直になれないながらに受け入れるシーンだったり、
キスシーンからハグしてのベッドシーン。
そういうシーンは無いが、
互いが最悪の形から、
如何に強烈惹かれていったのかよく伝わる場面だった。
「ココアが飲みたい」という彼女から発せられる、
「必ず戻ってきて」という力強い言葉。
復讐に狩られる彼からしたら、
一時の出会いを幾らでも無下に出来たろうに、
復讐は妄想世界で留めて吹っ切れる清々しさ。
ロッキーに悲しみを押し殺して伝えたシークレットナンバーも、
「俺の物だ」といつもの調子で取り消すのが良かったぜ…。
最後は待たせた彼女の為のLサイズ「チョコレート」に、
センスのいいハート型クッキー。
何だ何だ洒落ちゃって、大好きだぜこの野郎!!
非常に淡々として嫌な奴として描かれる主人公が、
最後にはスカッとしていながら甘酸っぱさも感じる人物になるとは…。
今の季節ともマッチしていて良かった。
これからも彼女が凍えそうなときに、
彼が孤独に殺されそうなときに、
互いに愛し合っていることを実感し合ってくれ…!