「名優ポール・ニューマンの人生にとってもデカい映画かも。」ハスラー2 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
名優ポール・ニューマンの人生にとってもデカい映画かも。
まさにリアルタイムで観たこともあり、思い出補正もあるのかもしれないが、何度も観た大好きな映画だ。しかし世評としては前作『ハスラー』の方がずっと高いし、ポール・ニューマンのキャリアにおいても、この作品でアカデミー主演男優賞を獲ったことに対して演技よりも功労賞だったのでは、と考える人は多い。実際、自分だってそう思ってしまっていた。
ところが、イーサン・ホークがポール・ニューマンの実人生のドキュメンタリーシリーズを作った際に、驚くほど『ハスラー2』を大きく扱っていた。というより、ニューマンの人生を締めくくるための最重要作であるかのように引用をしていたのだ。
ホークは自分と同世代であり、おそらくホークにしても、リアルタイムで劇場で観たニューマンの主演作は『ハスラー2』だったのではないか、と想像する。それだけ思い入れも強いに違いない、とも思う。
しかし、たしかにホークの熱弁を聞いてみれば、思っていた以上にニューマンその人とシンクロする映画であり、また、決して正しいというわけではないなにかに取り憑かれた主人公像という意味で、非常に濃厚なスコセッシ映画でもある。
思い出の映画だから、などという逃げではなく、もしかして今あらためて再評価するべき映画ではなかろうか。ちなみにスコセッシ作品の音楽に関わり続けているロビー・ロバートソンだが、本作ほど本来のギタリストとしてサントラに参加した例は珍しく、また過小評価されているボーカリストの側面が、仮で付けただけのくぐもったハミングに凝縮されているので、ロビー・ロバートソンという切り口からも再評価に値すると思う。
あと、この映画トム・クルーズ主演作としては『トップガン』と同時期に日本で上映されていたのですよね。この2本と『レインマン』あたりを続けてみると、若い日のトム・クルーズの幅も見出だせるように思う。さまざまな側面から貴重な名作。