「やっぱりロードムービー物はいい」バウンティフルへの旅 penguinさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりロードムービー物はいい
じんわりくる内容。
1940年代のアメリカが舞台。だから専業主婦の嫁さんと主人公のミセスワッツは24時間狭いアパートで顔を合わせる羽目になる。これが長年続いているというと確かにお互い気が滅入る。現代なら嫁さんは働きに出て姑さんと顔を四六時中合わせる必要もないけど、時代が時代だからまだこのころは旦那が働いて奥さんは家、という時代なんだよね。
家出が成功してバスの車中、偶然知り合った若い女性に自身の話をするミセスワッツ。人間誰しも一冊の本を書けるというのを聞いたことがある。それは自分の人生について。彼女の場合もそう。好きな人がいたのに父親同士が不仲で結婚できなかった。結婚した夫のことは尊敬できる人だったけど、愛したことはなかった。また、子供も二人も亡くした。悲しいとき、苦しいときは讃美歌を歌う。キリスト教が心の支えとなる理由が分かった気がした。人間生きるのに「希望」が必要。あまりに苦しいとき、何かにすがりたくなる、そんなとき、やっぱり宗教なんだな、って。日本人は宗教、ていうとすぐ危ない、とか危険とか思うけど、でも大切な人が病気になったとき、自分が試験を受けるとき、「神様!」て祈ってる。その心のよりどころはどこの国でも結局は同じ。
当方ももうすでに両親は他界した。だから迎えてくれる実家はもうない。物理的にも家はなくなってしまった。だから主人公が故郷の自分の実家を訪れた時、今にも両親が現れそう、と思う気持ちが良く分かる。自分を守ってくれる人がいて安心して過ごせた時間。あの頃。それを思い出したい。息子が迎えに来てくれたとき、思い出には意味がない、という。それは絶対違うと思う。何度でも繰り返して思い出したい思い出があるのは幸せなこと。繰り返して思いだせば良いと思う。
ラスト。迎えに来た嫁さん。今後のルールを切り出す。でも今後は彼女は週2回外出をするからその間は讃美歌を歌ってよい、という。また部屋の中で走るのはやめて。ミセスワッツの体によくないから、と。彼女も根っからの悪い人じゃない、ということが分かって彼女のほほにキスをするミセスワッツ。また喧嘩が始まりそうなラストだけど、でも息子が奥さんを一喝することで今後なんとかなりそうな3人。
それにしてもほかの人のレビューを読んでミセスワッツを演じたジュラルディン・ペイジ、この映画に出演したとき61歳とのことで超びっくり!!後期高齢者あたりの年齢と思ってましたよ。心臓が弱そうな演技?この映画でアカデミー主演女優賞を獲得し、翌年に亡くなったとのこと。翌年にも映画に出演しているから最後まで現役だったんだなぁ。