ニル・バイ・マウス

劇場公開日:

解説

酒とドラッグに明け暮れるロンドン下町の労働者階級の生活を、激しくも温かい視線でとらえた一編。監督・脚本は「レオン」「フィフス・エレメント」などの個性派俳優ゲーリー・オールドマンで、彼の監督デビュー作。オールドマン自身が幼少期をすごしたロンドンの下町をモデルにしている。製作は「フィフス・エレメント」のリュック・ベッソンとダグラス・アーバンスキ、オールドマン。撮影は「バスキア」のロン・フォーチュナト。音楽はロック界を代表するギタリスト、エリック・クラプトンがつとめ、音楽監修にマーゴット・コアがあたった。美術は「プリック・アップ」のヒューゴ・ルクツィク=ウィホウスキー。編集はブラッド・フラー。衣裳はバーバラ・キッド。出演は「レディバード レディバード」のレイ・ウィンストン、「奇跡の海」のキャシー・バークほか。

1997年製作/120分/イギリス
原題または英題:Nil By Mouth
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1998年2月21日

ストーリー

サウスロンドンのデプトフッド。失業者レイモンド(レイ・ウィンストン)は、夜になると義理の弟ビリー(チャーリー・クリード=マイルズ)や仲間のマーク(ジェイミー・フォアマン)たちとパブやストリップに繰り出す生活を送っていた。ビリーは工場で働く母親ジャネット(ライラ・モース)や祖母(エドナ・ドール)と一緒に暮らしていた。ビリーの父親は前科者で、家計を支えているのはしっかり者の母親だった。ビリーは母親が必死に働いて稼いだ金をドラッグにつぎ込んでいる。クスリが切れると禁断症状に苦しみ、母親に車を運転させて買いに行き、車の中で注射を打つこともあった。そんな息子を母親は悲痛な眼差しで見守る。酒癖の悪いレイモンドの暴力もエスカレートする一方だった。彼はビリーの姉ヴァレリー(キャシー・パーク)の夫で、ふたりの間には5歳になる娘ミシェル(リア・フィッツジェラルド)がいるが、レイモンドは前妻との間にできた息子のこともいまだに深く愛している。レイモンドは、こっそり自分の家に忍び込んでドラッグを盗んだビリーに腹を立て、激怒のあまり彼の鼻に噛みつく。またプールバーで妻が他の男とビリヤードをするのに嫉妬して、何の言い分も聞かず妊娠中の彼女を殴りつけ、流産させてしまう。激しく喧嘩する両親を幼いミシェルがじっと見つめる。ヴァレリーは夫に愛想を尽かして実家に戻り、ジャネットやビリーと暮らすようになるが、妻に去られたレイモンドは酒浸りになり、深い孤独に苦しんで家中を荒し回る。かつて自分への愛を示してくれなかったパブ浸りの父親に対する複雑な思いを、切々とマークに打ち明けることもあった。ヴァレリーの誕生日、降りしきる雨の中で彼女を待ち伏せたレイモンドは、自分が暴力を振るうのは愛ゆえだと告白し、心から許しを請う。かといってヴァレリーもすぐに元の鞘におさまるわけにはいかない。そんな中、ビリーが不良仲間と一緒に逮捕され、二年半の刑期を言い渡される。この非常事態に、残された者たちは家族としての絆を取り戻す。レイモンドは自分で荒らした部屋を丁寧に修復し、ミシェルも父への恐れを解いてすっかり彼になついたようだ。かくして一家は、和やかな笑顔で、刑務所にいるビリーに会いに行こうとしていた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第50回 カンヌ国際映画祭(1997年)

受賞

コンペティション部門
女優賞 キャシー・バーク

出品

コンペティション部門
出品作品 ゲイリー・オールドマン
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映画レビュー

4.5負の連鎖

2023年6月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

ゲイリー・オールドマンの初監督作品、これ一本だけじゃ勿体無いと思わせるリュック・ベッソンもお手上げな映画監督としての手腕を発揮、ダニー・ボイルの『トレインスポッティング』やガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』ではしゃいでるのが馬鹿らしくなる、この二人よりも巧いゲイリー・オールドマンがショーン・ペンの一作目『インディアン・ランナー』に引けを取らない傑作をブチ込んで来た、いや、怪作という表現が合っているのかも!?

ラストは地味ながらの衝撃的な展開で呆気に取られてしまう、ハッピーエンドのようで確実にバッドエンドな感覚に驚きながらも呆れ返る家族模様、意識することもなく改善の余地すらない、この繰り返しを代々受け継ぎながら家族が形成されている悪循環。

レイ・ウィンストンは『SCUM スカム』から一切の更生をする事も無く大人になったような徹底的にクソ野郎で胸糞が悪くなる役柄を今だったらトム・ハーディが演じても様になるようで、唐突に『地獄の黙示録』が映し出されデニス・ホッパーの長台詞を真似る全身刺青ヤローは"ロック、ストック"でも印象的なキャラクターを演じていた。

賢く学習する術を持ち合わせない女三代が男で苦労しながら身を滅ぼすギリギリを、何だかんだで楽しく生活しながらの痛々しさに直視出来ない哀れな現実が見え隠れ。

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万年 東一

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