「パートナーを大事にして、メジャーコードで生きていこう そんな思いを新たにする映画でした」ニューヨーク・ニューヨーク あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
パートナーを大事にして、メジャーコードで生きていこう そんな思いを新たにする映画でした
希有な傑作
ミュージカル好きならマスト
男と女の違い、すれ違い
どんなに愛し合ってもこうなってしまう
痛いほど、ビシビシと伝わってきます
パートナーと長く暮らしていれば、あるあるシーンも多いと思います
ジミーの性格や行動は極端なほどオーバー過ぎるようににわざと描かれています
それは突き詰めてみれば殆どの男はこんな生き物だと言うことを示すための演出です
男の身勝手さ、変なプライド
胸糞悪いかも知れませんが、ジミーの要素を男はみんな持っているものです
フランシーヌが鏡を見つめるシーンが多いことに注目すべきです
スコセッシ監督の演出の狙いが伝わって来ます
女は男の良い面だけを見ようとするのですが、嫌でも悪い面も見なくてはならなくなります
男も見たくもない自分の嫌な面、駄目な面を突きつけられ、みつめさせられるのです
スコセッシ監督が用意した鏡に、我が身を照らし出されてしまうのです
その鏡で振り返ってみると、自分もジミーほどひどくは無くても似たような心無い言動や卑劣な行動がなきにしもあらずなのです
胸が痛み、冷や汗がでてきます
こころあたりのある男性も多いのではと思います
結局、楽屋口にフランシーヌは現れませんでした
ハッピーエンディングにはならなかったかも知れません
でもこれでハッピーエンディングなのだと思います
いまさらやり直してどうなる
また振り出しに戻ってしまうのは二人とも分かっていたのです
男も女も成功をつかんだ
あの時、男と女がであったからこそ今がある
ドラマもなく出会いもなく、なにもなく終わる人生より何倍も素敵な人生になった
しみじみと二人とも思っています
二人でいた時は、いつしか角突きあって本当につらい日々だった
だとしても、楽しい日々だってあった
その思い出だけを思い出せばいい
メジャーコードで前向きに進んでいくんだ
それが本作のテーマであったと思います
フランシーヌは上行きのエレベーターのボタンを押します
エレベーターの閉まるドア
それは辛い思い出を閉め出したシーンだったのです
ジミーは雨上がりのNY の歩道を傘を持って歩き去ります
雨に唄えばみたいに晴れやかではないけれど、
これからはもっと前向きに生きていけるのだと思います
二人が出逢ったからこそ産まれた子供の姿をきっと思い返していると思います
ビールのコマーシャルソングに使われているぐらいポピュラーな主題歌は、終盤で歌われます
ライザ・ミネリ圧巻のアクトで思わず拍手してしまうほどのものです
前半から中盤にかけてもミュージカル風の演出がされているシーンが多くあることに注目頂きたいと思います
これは、後半の劇中のミュージカル映画とつながっていて、この二人の物語もまたハッピーエンディングの映画の中であるという構造なのです
そしてこの映画を観る私達もまた、映画の中なのかも知れないと思わせる監督の演出なのです
私達の人生をハッピーエンディングにするのは、これからの私達の生き方ひとつです
パートナーを大事にして、メジャーコードで生きていこう
そんな思いを新たにする映画でした