「現代のロシア人も楽しめる時代であれば」ニノチカ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
現代のロシア人も楽しめる時代であれば
NHKのBS放送を録画して鑑賞したが、
この映画の存在を知らず期待が無かった分
だけ、拾い物のように楽しめた。
冷戦時代のソ連は秘密のベールに
包まれていたこともあり、
一部の知識人には憧れの国に見えた時期も
あったようだが、戦前は
社会主義国家のアラが見え見えだったのか、
あるいは西側の政治的なプロパガンダが
影響しているのか、
随分とソ連をコケにしたディフォルメの
効いた作品だった。
ここまで皮肉が過激だと逆にロシアの皆さんに遠慮することなく安心して楽しんで
いいのかなと観た。
今となっては、ロシアの方々も
イデオロギーを別にして笑って楽しめる
映画になっていればいいのだがと思いつつ、
プーチンの時代になってそうでもない状況に
なっていなければと心配ごころも浮かんだ。
KENZO一級建築士事務所さんへ
エルンスト・ルビッチ監督は名監督ですが、今話題にする人は少ないですね。私は「結婚哲学」「極楽特急」「私の殺した男」「青髭八人目の妻」「ニノチカ」「生きるべきか死ぬべきか」しか観ていませが、どれも大好きです。心残りはサイレント映画の代表作「ウィンダミア卿夫人の扇」を見逃したことです。それでも「結婚哲学」「私の殺した男」「生きるべきか死ぬべきか」の三作品で崇拝する映画監督の一人になりました。一言で云えば、大人が楽しめる最も上品で艶っぽい映画の最高の監督です。ですから「私の殺した男」は本当に特別なルビッチ作品になると思います。
KENZO一級建築士事務所さんへ、コメントありがとうございます。
戦前のハリウッドが映画の都であったと同時に、ヨーロッパも現在より遥かに力がありました。ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、デンマークやスウェーデンそしてソ連と各国の映画会社が映画人を育てていたと思われます。そこで師弟関係が生まれ匠の伝達が成される。特にドイツはムルナウとラングの巨匠がいて一時代を築きました。ルビッチはデビューして間もなくハリウッドに引き抜かれてサイレントの傑作を連発します。「結婚哲学」しか観ていませんが、これにはビックリ仰天の衝撃を受けました。1930年代にサイレントからトーキーになって役者と脚本の重要性が高まるのと、ナチスドイツの台頭による政治不安による映画人の流出が重なりました。ルビッチ監督が男と女の出会いのシナリオに困っていた時に、新人脚本家のワイルダーのアイデアを採用しました。同じドイツ系で価値観が合ったのだと思います。ルビッチ監督は都会的なセンスと男女の恋愛模様のユーモアが特徴で、ワイルダー監督は皮肉が効いたブラックユーモアが面白いですね。キャリアも引き継ぐ形で、ワイルダー監督が大戦後長くアメリカ映画の一翼を担ったのは映画ファンとって宝物です。現在日本も含め興行の良し悪しに影響されて、映画人の育成に力を注ぐ映画会社が少なくなりました。そこが残念ですね。