劇場公開日 1961年8月15日

「責任ある大人の姿」ナバロンの要塞 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0責任ある大人の姿

2024年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

この映画は「大人の責任」をテーマにしていると思えた。ナバロンの要塞爆破を無理だと分かりつつも、自分に責任は及ばないからと部下に命じる上司のジェンセン准将。作戦遂行のため、負傷したフランクリン少佐に嘘の情報を教えるマロリー大尉。火薬の隠し場所を尋ねながら「隊長は立場上答えられないだろう。その点君ら(部下)は楽だ。」と言うドイツ軍将校。自分が人を殺したくないからとスパイ殺しを人任せにするミラー伍長。彼らの言動から、大人が背負うべき責任とは何かを伝えてくる映画だと思う。特にマロリー大尉は部隊長なので、自分の判断が作戦の成否や部下の命、そして自分に対する批判に関わってくる辛い立場にいる。責任ある判断を下していく彼の姿は、一見すると冷酷な様に見える。しかし、それは私情を捨てて長期的な目線でベストな判断を下そうとした結果であって、大人のあるべき姿に思えた。

ストーリーは昔の映画らしく冗長だが、このテーマに気づいてからは面白いと思えた。沈没する船から荒波の中に脱出したり、豪雨の中崖によじ登ったりと、どうやって撮影しているのか知らないが結構体を張っていて、そこにリアリティが感じられた。

根岸 圭一