劇場公開日 1995年2月4日

「究極のアナーキズムに不覚にも心が晴れました」ナチュラル・ボーン・キラーズ あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5究極のアナーキズムに不覚にも心が晴れました

2009年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

難しい

1994年アメリカ映画。119分。クエンティン・タランティーノの原案をもとにオリバー・ストーン監督が映画化した社会派バイオレンス・ロードムービーでございます。ハリウッド映画の問題児タランティーノの当時の頭の中が垣間見れる作品。

内容は、近親相姦されていた女とそれを救った男の逃避劇。二人はハイウェイ666(!)をひたすら車を走らせ、道行く人を片っ端から殺していきます。しかし、そんな二人の姿は、大衆の心にカタルシスとなり、ヒーローへと祭り上げられていく。そんな二人はどのような終着点に辿りつくのか、または道半ば倒れるのかといった按配でございます。

脳裏にこびりつくサイケデリックな描写をこれでもかと観させられたのに、不謹慎にも心がすがすがしくなれる作品です(本当に不謹慎!?)。とういうのも、本作は殺人を犯し続ける犯人たちの姿に、不覚にも心の中のなにかが疼くからなのです。

それは「体制」によってでっちあげられたこの世の公明正大さ、大義名分、美辞麗句に対して、この二人はどこまでもアウトサイダーなのだからでしょう。わたしも含めた多くの人は長く生きていくにつれ、臆病になり、そして長いものに巻かれていくことを疑問を抱くことなく受け入れていくようになる(そうしないと生きていけないから)。それでも、テレビをつけると着飾ったタレントさんたちが過剰にこの世の素晴らしさを歌いあげている姿に、心のどこかでしらけているのも事実。

そんなわたくしが常日頃悶々とさせている不満を、本作はものの見事に憂さ晴らししてくれるのです(それにわたくしにはそんなことする度胸ないし)。本作はとても危険な映画ですが、それでも大衆娯楽として成功しているのは、全編を通してコミック仕立てにしていたからだと思います。本作は、突き詰めるとエスプリの利きまくったコメディだと思います。

主演二人もさることながら、ロバート・ダウニーJrとトミー・リー・ジョーンズといった脇役人の名演技もこの映画を支えています。

タランティーノは現代のセリーヌのような人ですね。

念のため、おすすめはしない映画ではあります。

あんゆ~る